2014 Fiscal Year Research-status Report
個人差・多要因・効果量を重視した応用科学独自の研究法:教育領域における活用
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26560329
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂入 洋右 筑波大学, 体育系, 教授 (70247568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中塚 健太郎 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 講師 (00609737)
三田部 勇 筑波大学, 体育系, 准教授 (00709230)
清水 武 筑波大学, スポーツR&Dコア, 研究員 (20613590)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 心理状態 / セルフコントロール / 二次元気分尺度 / 学習課題 / リラクセーション / 軽運動 / 研究方法 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、各個人が自分の身心の状態をモニタリングし、軽運動や自律訓練法などの身体技法を活用して、目的とする課題の遂行に適した状態に自己調整する「個性対応型“身心の自己調整システム”(2009年特許取得:第4378455号)」を開発し、これまでスポーツ領域でのパフォーマンス発揮を中心に、その有効性を検証してきた。本研究は、このシステムの教育領域における活用を可能にするため、認知課題及び学習課題の遂行成績の向上に関して、青少年を適用対象としてその有効性を検証することを目的とした。 本年度は、まず、心身の状態を調整する方法の有効性を確認するため、各種の軽運動や音楽及びリラクセーション技法の心理的効果の特徴を、二次元気分尺度を用いて比較検討した。次に、大学生を対象として、起床時や疲労時に動的運動(アクティベーション)および自律訓練法(リラクセーション)を実施することによって心理状態が調整され、数的処理・注意力測定課題の遂行成績が上昇することを確認した。さらに、小・中学生を対象として、各児童・生徒が姿勢を調整することによって、心理・生理状態(心理的活性度及び交感神経活動)の活性度が高まり、その活性度の変化に応じて計算課題及び聞き取り課題の遂行成績が向上することを確認した。 スポーツの競技成績に限らず、勉強や仕事の課題成績や作業能率など、多様なアウトカムに対して「身心の自己調整システム」の活用が有効であることが確認されれば、スポーツや教育現場だけでなく教育・産業・保健・福祉などの幅広い領域において、有益な成果をもたらすことが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、これまでスポーツ領域で活用されてきた「身心の自己調整システム」の有効性を教育領域への適用に関して検証することと、それらの研究の推進を通して応用科学独自の新たな研究方法を提示することである。 研究計画では、今年度は大学生を対象に研究を推進し、児童生徒を対象とした研究は次年度に実施する予定であったが、すでに小中学生を対象とした研究を実施しており、その点では当初の計画以上に進展している。しかし、応用科学のための新たな研究方法の提案の基礎となる包括的媒介変数(心理状態)によるパフォーマンス(課題成績)の変動の個人別予測については、十分に進展しているとは言えない状態にある。そのため、全体的な評価としておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
軽運動やリラクセーション技法を活用した身心の状態の自己調整が、青少年の心理状態を課題に適した快適な状態にし、認知課題や学習課題の遂行成績を向上させることが、全体的な効果として確認できている。しかし、この効果を最大化するためには、二次元気分尺度を用いて測定される心理状態を包括的媒介変数としてパフォーマンスの変動を予測し、各個人の特性や状態に応じた柔軟な自己調整技法の活用を可能にする必要がある。 今後は、各課題の遂行に適した心理状態のエリアを個人ごとに明らかにした上で、包括的媒介変数を指標として適した自己調整技法を選択実施できる状況での研究を推進する。
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Causes of Carryover |
研究の遂行に際して、心理指標・生理指標・行動指標を用いた測定を実施する予定であったが、生理・行動指標に関しては包括的媒介変数としての活用が不十分だったため、初年度は心理指標を中心に活用して研究を実施し、次年度の課題とした。 そのため、生理・行動測定に関連する消耗品やデータ分析等にかかる費用について未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究の遂行に際して、初年度に実施が不十分だった生理・行動測定指標を活用するので、それらの測定に必要な消耗品やデータ分析等にかかる費用として使用する。
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Research Products
(5 results)