2014 Fiscal Year Research-status Report
報酬系主導による子どもの社会行動に関する生物学的文化人類学研究
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26560337
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Research Institution | Tokyo Seitoku College |
Principal Investigator |
八木 玲子 東京成徳短期大学, 幼児教育科, 准教授 (80281591)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 報酬系 / シェアリング / 社会行動 / 同期 / 協調 / 向社会的行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自然選択説では説明が困難なシェアリング(分配・共有)という互恵的社会行動を対象とし、なかでも社会制度や倫理的道徳的規範によらず、報酬系に導かれて自発的に生ずる生得的な側面に注目して、その進化上の生物学的合理性や必然性について明らかにしようとするものである。そのため、報酬系主導――すなわち「楽しさ」「美しさ」「こころよさ」といった快の情動に導かれて自発的に生ずる社会的行動として、子どもの伝統的な集団遊びや音を使った複数人数での遊びに着目し、以下3つの項目について研究を進めた。 ①報酬系主導による子どもの社会行動に関する調査:A.文献調査…日常生活や祝祭儀礼において、快の情動に導かれた物質的・情報的シェアリングが頻繁に認められる伝統社会を主な対象とした文献調査を行った。アフリカ熱帯雨林の狩猟採集社会、インドネシア共和国バリ州の村落共同体を中心に、オセアニア、南アジア、中南米その他の地域の伝統社会にも視野を広げ、子どもの集団遊びや音を使った遊びについて調べた。B.フィールド調査…Aにより得られた成果と現状の国際的な治安状況を勘案し、インドネシア共和国バリ州におけるフィールド調査を実施した。現地での聞き取り調査を経て、複数種類の伝統的な集団遊びや音を使った遊びを実地に観察し、記録することに成功した。 ②情報的シェアリングにともなうシステム効果の創出過程の解明:1-Bにより得られた記録物の中から、音を用いた集団遊びの映像音響記録を主な対象とした分析を行った。これにより、音という情報のシェアリングを通じて、子どもたちが自ずと自らの行動を他者と同期・協調させることで、組織化されたシステムとしての出力を実現する過程について検討し、そのメカニズムの一部を明らかにした。 ③システム効果の評価手法の検討:②により見出されたシステムの効果を定量化・可視化するための研究手法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のすべての項目について、ほぼ予定どおりの研究成果があがっていることから、研究全体がおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で、研究計画の変更および研究を遂行する上での問題は生じておらず、今後は、当初の研究計画にもとづいて研究を進めていく予定である。 ただし、申請段階では研究対象を子どもの「音遊び」および「音楽行動」に限定していたが、平成26年度の研究を通じて、子どもの集団遊び全般を「報酬系主導により自発的に行われる情報的シェアリング」としてとらえることで、より広い視野のもとに研究を遂行できる見込みが得られつつある。 このことから、今後は、研究対象を当初の「音遊びと音楽行動」から「集団遊び全般」へと広げつつ研究を進めたいと考えている。
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Research Products
(2 results)