2014 Fiscal Year Research-status Report
アロマセラピーを用いたCOPD治療の新たな選択肢の提案
Project/Area Number |
26560383
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
柴倉 美砂子 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (30314694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯尾 友愛(上野友愛) 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (80613158)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アロマセラピー / ラベンダー精油 / COPD / 肺気腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)はタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入することで生じる肺の慢性炎症性疾患である。申請者らは,これまでの研究でマウス喘息モデルを用いてラベンダー精油が抗アレルギー性炎症作用を持つことを明らかにした。精油はアロマセラピーに用いられる天然揮発性有機化合物であり,抗炎症作用を持つ精油はCOPD治療を妨げず,症状の進展抑制に取り入れる事ができるのではないかと考えた。 平成26年度は,エラスターゼで誘発する肺気腫のマウスCOPDモデルにおけるラベンダー精油の影響を,小動物用肺機能装置を用いた肺機能測定や肺胞洗浄液中の細胞分画,摘出肺の病理組織画像解析にて評価した。マウスにエラスターゼを投与する6日前よりマウスを5 Lの容器に入れラベンダー精油20 μLを濾紙に塗布し,エラスターゼを気道に投与10日後の実験当日まで連日20分間吸引させた。肺機能測定では,動肺コンプライアンスの有意な上昇と動肺エラスタンスの有意な低下が,対照群と比較してCOPDマウス群及び精油処置COPDマウス群で認められた。肺胞洗浄液中の細胞分画は,総細胞数とマクロファージ数において、対照群と比較してCOPDマウス群と精油処置COPDマウス群で有意に増加した。COPDマウス群と比較すると精油処置COPDマウス群では減少傾向が認められた。また対照群と比較してCOPDマウス群では,リンパ球数と好中球数が有意に増加した。HE染色の病理組織画像解析では,肺胞気腔面積,肺胞周囲径,平均肺胞壁間距離,相当直径において,対照群と比較してCOPDマウス群,精油処置COPDマウス群で有意に上昇した。一方,COPDマウス群と比較して精油処置COPDマウス群では,すべての項目において有意に低下した。本結果から,ラベンダー精油に肺胞破壊の進展を抑制する効果が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精油の吸引処置によって,COPDマウスの肺胞破壊の抑制が病理組織画像解析で確認された。しかし,肺機能や肺胞洗浄液中の細胞分画にラベンダー精油処置による明らかなCOPD所見の抑制作用は認められなかった。病理組織画像解析で認められたラベンダー精油処置による肺胞破壊抑制は,肺機能に反映されるほど大きな変化ではなかったと考えられる。細胞分画に精油処置の影響が認められなかったことに関しては,肺胞洗浄液採取の時期が影響していると考えられる。このように,ラベンダー精油の肺胞破壊抑制効果は認められており,本研究はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本モデルでは,約5 U/mlのエラスターゼをマウスの気道に投与しており,急速で著しい肺胞破壊が誘導される。そこで今後は,エラスターゼの投与量を減少させ,それに伴い肺機能測定や肺胞洗浄液および肺の採取をエラスターゼ投与7日後と21日後に行う。精油は様々な揮発性有機化合物から構成されているが,中でも強い抗炎症作用を認める1,8-cineoleを主成分に含むユーカリ精油なども用いてCOPD進展抑制効果を検討する。肺機能測定,肺胞洗浄液中細胞分画,摘出肺による病理組織解析を行い,同時に肺組織よりRNAを抽出しcDNAを合成して,MMP-12,VEGF,NO合成酵素,8-OhdG,ヘムオキシゲナーゼ,細胞接着分子などのmRNAの発現をRT-PCR法で定量する。またBALF中のTh1/Th2サイトカインや炎症性サイトカインをELISA法により測定する。
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