2014 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病関連遺伝子、Elovl6が骨軟骨発達異常を来すメカニズムの解明
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26560393
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
嶋田 昌子 相模女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30637369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島野 仁 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20251241)
松坂 賢 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70400679)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 骨軟骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病と、関節症や骨粗鬆症といった骨・軟骨組織の病気の相関が近年、臨床研究により明らかにされてきたが、その病態のメカニズムはまだ、十分に解明されていない。本研究は、生活習慣病と有意の相関がみられる遺伝子、脂肪酸伸長酵素 “Elovl6” を欠損したマウスにおいて胎生期の成長板・骨の発達に異常がみられる、という我々の最近の知見に基づき、その詳細な表現型の検討とその背景となる作用メカニズムの解明を行うことを研究目的とした。 平成26年度は、普通食下においてElovl6欠損マウスの胎生期の骨・成長板の各発達段階での表現型を主に検討した。1)E15.5からE18.5までの胎児と新生児の成長、patterningの異常を体重の変化、Alcian blue と Alizarin red による whole skeletal 染色などにより検討した。2)軟骨細胞の増殖とアポトーシスの評価。軟骨細胞の増殖に関しては、BrdUを母体あるいは新生マウスに注射し、2時間後に殺戮。E15.5, E18.5, 生直後の脛骨の連続パラフィン切片を作成し、BrdUのとりこみで細胞の増殖を評価した。TUNEL染色で成長板での軟骨細胞のアポトーシスを評価した。3)軟骨細胞の肥大の促進、遅延の評価。軟骨細胞の肥大の始まるE14.5および、軟骨から骨への置換がほぼ完了する生直後の脛骨の組織標本において、ISH の手法を用いて検討した。4)破骨細胞の数をTRAP遺伝子の発現と染色で解析した。5)新生マウスの肋軟骨から初代軟骨細胞を単離培養し、軟骨細胞からRNAを精製して、マイクロアレイ解析を行い、Elovl6の標的遺伝子を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
普通食下においてElovl6欠損マウスの胎生期の骨・成長板の各発達段階での表現型の解析を完了する予定であったが、E13.5、14.5の胎児の脛骨における表現型の解析がまだ不十分で引き続き検討を要する。また、破骨細胞の数をTRAP遺伝子の発現と染色で確認したが、機能の検査として、新生マウスの頭骸骨から分離する骨芽細胞と脾臓細胞を用いて、co-cultureを行い、osteoclastogenesisを観察したり、骨吸収 pit assay により、破骨細胞の骨吸収能を検討する部分は、まだ再検討の余地を要する。主な遅延の原因としては、遺伝子変異マウスの生存率が低く、また、胎児期は骨が小さく、組織断面の方向と深さが対照群と変異マウス群で比較に十分なほど合致した試料標本を同胞として得ることに予想していた以上の困難を経験したことによる。信頼性の高いデーターを得るために今後、期間を延長して引き続き検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、Elovl6の転写標的遺伝子の同定とメカニズムの確立を主たる目的とする。昨年度内に行った、新生マウスの肋軟骨から初代軟骨細胞を用いたマイクロアレイの解析の結果を、qPCRにて実際に確認し、アレイの解析から同定した標的遺伝子の成長板での遺伝子発現、 蛋白発現をISH, Immunocytochemistry により解析し、確認する。その後、幾つかの主なパスウェイに焦点を絞って、Elovl6の欠損で、遺伝子発現がどのようなメカニズムで変化し、結果として骨、成長板の表現型を呈するに至ったメカニズムを検討する。 次に、骨・軟骨組織の病態形成における食事の役割を確認する。マウスへの高脂肪高ショ糖食の負荷は肥満、インスリン抵抗性を惹起する。食事の変化、脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の形成過程において成長板、骨代謝への破綻が病態形成にどの程度影響するのか、また、分子間のネットワークの破綻の原因を検証する。 最後に、新生マウスの成長板を顕微鏡下で切離し、代謝産物の動態をメタボローム解析で網羅的に解析を行う。生活習慣病との関連性の解明を最終的な研究の目的にしており、遺伝子発現のパターンと代謝産物の動態をリンクさせることでどの組織のどの代謝経路が病態の発症、改善に重要かを検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年4月1日より、研究代表者が筑波大学から相模女子大学に異動になり、それに伴う研究室の整備の充実、研究試料の移送、再起動に時間を要したために、代表者による研究使用額が計画よりも大幅に減る状況になった。平成26年度は主に、筑波大学の研究分担者の研究室において、研究代表者が研究日を利用して週1回程度筑波大学に出向きまた、セキュリティーの確立した電子媒体で研究の進捗状況を逐一把握しながら、代表者が米国の研究室で確立していた骨、軟骨の解析法を筑波大学にて確立、使用しながら大学院生の菊地とともに遺伝子改変マウスによる表現型の解析が主に行われ前述の一定の成果を上げるに至っている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年3月に相模女子大学の新棟に細胞培養室、P2実験室、低温室、共同実験スペースなどを兼ね備えた、共同実験室が完成し、研究代表者の実験のスペース、研究に必要な十分な機器類、設備が改めて充実、確立された。4月より、栄養科学部の学生も8人、研究代表者の研究室に加わり、一部は基礎実験を念頭に研究を開始している。したがって、現在やや遅れがちになっている、培養細胞を用いたメカニズムの解析、食事性の変化によるマウスの骨サンプルの処理・解析を中心に相模女子大学でも、本課題の研究を確立、発展、遂行していく予定である。また、筑波大学では、引き続き、変異マウスを用いた食事性の骨軟骨の発達上の表現型の検討、骨サンプルの採取などで分担研究を継続していく。昨年使用残した研究費と当初より本年度の支給予定とされていた研究費を合わせて活用しながら、以上の計画に則って研究を精力的に遂行していく予定である。
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