2015 Fiscal Year Research-status Report
歯周病予防に向けた病原菌の生育阻害剤の開発:その基礎的研究
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26560405
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
平岡 行博 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20097512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
山下 照仁 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (90302893)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | SOD / 金属酵素 / 歯周病原菌 / 金属選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
P.g. SODは、金属酵素としては例外的に金属種を変えても活性を保持できる特徴があり、「交換可能」という意味で「cambialistic」酵素と呼ばれる。私たちは、この特徴は活性中心近傍に配置するアミノ酸残基の機能として捉え、アミノ酸の変異体を作製して個々の残基の機能を明らかにしようとしている。現在までの成果として、P.g. SODのN末端から155番目にあるGly(Gly-155)N末端から155番目にあるGly(Gly-155)は、活性中心から11Å離れていながら、活性発現の金属依存性に関わっていた事を明らかにできた。今回、P.g. SODのGly-155をTyr、Ser、Valにそれぞれ単独で部位特異的変異させた変異体(Gly155Tyr、Gly155Ser、Gly155Val)を作製し、即鎖のOH基の意義を検討する事を目的とした。 Gly155Ser、Gly155Val変異体は、野生型酵素と同様に精製が可能であった。すなわち、発現ベクターpMALを用いてマルトース結合タンパク質(MBP)とSODの融合タンパク質を作製し、Amyloseカラムを用いたアフィニティで単離した後、トリプシン処理して遊離したSODをQ-SepharoseでSDS-PAGE的に精製できた。また、変異酵素の分子量は理論値と一致し、塩基配列の結果からも目的の変異体が得られた事を示唆した。一方、Gly155Tyr 変異体はトリプシン消化による融合タンパク質との分離ができず、分解された。この現象は、かさ高いTyr即鎖を155残基周囲の空間が吸収できず、酵素全体の構造を大きく変化させた結果と考えられる。 現在、2種変異酵素のFeおよびMnに対する金属依存活性と。酵素の金属配位環境を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
部位特異的変異に用いたKunkel の方法は、煩雑さがあるものの効率がよく、また同時に複数箇所に変異を導入できるというメリットがあるため、これを採用している。標的塩基以外に変異の無い事は、塩基配列の決定で確認した。また、発現タンパク質の一次構造を確認するため、分子量を測定する事によっても変異の導入を確認できた。さらに、既報 (Biochem. J., 2000) に倣って、簡便なアフィニティー精製法を確立し、精製SODを得る事ができた。この様な再現性の良い結果が得られた理由は、アミノ酸置換に伴う立体構造の歪みが生じなかった点が指摘できる。これにより、タンパク質の可溶性を変化させたり凝集する可能性もなく、実験成果が順調に得られた原因になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られた2種変異酵素に対して、FeおよびMnに対する活性の金属依存性を検討すべく、精製酵素を変性させながらキレート剤で金属を除去し、アポ酵素に FeあるいはMnを加え、Fe(Mn)-SODに再構成した酵素を得る。再構成酵素の吸収スペクトルと比活性を調べ、金属依存性活性の変化を検討する事を目的とし、今後の研究を展開する。 これと並行し、Gly155Alaの変異体作製を検討する。側鎖がメチル基だけであり、Glyに次いで簡単な構造を持つAlaの変異体は、この研究の方向性に大きな示唆を与えるものと期待している。
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Causes of Carryover |
3月に使用予定であった融合タンパク質の精製に用いるクロマトグラフィー樹脂:Amylose resin (New England Biolabs 社製 100mL 定価 \70,000)2本、計¥140,000が、研究の進捗状況によって購入を見送ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の最終年度にあたり、通常の年度の実験費用に加えて、論文の作成に必要な英文校正と論文の掲載料として使用していく。
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