2015 Fiscal Year Research-status Report
保育における遊びのリスク・ベネフィットバランスに関する総合的研究
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26560416
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
杉村 伸一郎 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40235891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉盛 美穂子 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (90435355)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 保育 / 遊び / 怪我 / リスクマネジメント / 自己調整学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,保育者や保護者の遊びに関するリスク・ベネフィット観と子どもの遊びのベネフィットの関係を明らかにするとともに,リスク・ベネフィット観の変化や調整の過程を検討することであった。そのために今年度は,昨年度開発した保護者用のリスク・ベネフィット尺度をベースに,保育者を対象にした自由回答法による検討と,保育者を対象にした評定法による検討を行った。 保育者を対象にした自由回答法による検討では,保育者19名に,以下の5つの質問項目に対して自由回答を求めた。 1)スリルのある遊びをさせるか否かとその理由,2)スリルのある遊びを経験する意味,3)遊具等での定形外の遊び方をする意味,4)スリルのある遊びへの大人の関わり方で気になっていること,5)スリルのある遊びに対する保育者と保護者との意識の違い。その結果,保育者は,スリルのある遊びを通じて「危険の理解」「身体の発達」「自信」「友達との関わり方」「発想力」等が育つと考えていることが明らかになった。また,保育者と保護者では,スリルのある遊びを通じて得られる能力を意識する程度が異なることが示唆された。 保育者を対象にした評定法による検討では,私立幼稚園の保育者15名と私立認定こども園の保育者112名,合計127名に,保護者用の項目に自由回答を参考に作成した項目を加えた合計47項目の質問紙を実施した。因子分析の結果,幼児の遊びにおけるリスクマネジメント評価尺度として,価値は3因子構造,管理は2因子構造,調整は4因子構造の9つの下位尺度が構成された。また,下位尺度間相関から保育者管理には,リスク管理能力,怪我の回避,不安,各子どもの特性が関連していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は,予備調査の結果に基づき尺度項目を調整した後,保護者1,000名程度を対象に本調査をインターネットで実施する予定であった。しかし,保育者と保護者とで因子構造が異なったため,どのように調整するかの検討に予想以上に時間がかかった。また,子どもの発達を評価する既存の尺度に適切なものが見当たらず,その選択も難航した。そのために,年度内にインターネット調査を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の問題は,現時点でほぼ解決しているので,6月以降に保護者1,000名,保育者500名程度を対象に本調査を実施する予定である。保護者の半数は,多様性を確保するために,インターネット調査を利用する。基本的な目的は予備調査と同じで,保護者や保育者のリスク受容の程度やベネフィット重視の程度,また両者のバランスが,子どもの発達のどの側面をどの程度阻害したり促進したりするのかを明らかにすることである。そして,その結果をいくつかの園にフィードバックすることにより,啓発プログラムを検討する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に実施を予定していたインターネット調査が,尺度の調整や選択に予想以上に時間がかかり,実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の繰り越し額は,ほぼ全額がインターネット調査費であったため,今年度の前半に延期されたインターネット調査で使用する。今年度分の予算の大部分は,保育者の郵送調査に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)