2017 Fiscal Year Research-status Report
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26560424
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
嶋田 容子 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (60422903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳児 / 発声 / 独言 / 私的言語 / 自閉症スペクトラム障害 / 音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
生後5ヶ月で家庭における独言記録を実施した対象児のデータについて、これまでに取得したビデオを分析し、時系列の事象の関連性、リズミカルな音声と動作の関連性を調べた。乳児の独言において、音声の変化と行動の変化に関連がみられることが示唆された。乳児の独言においても、一定の行動との関連が示されたことは、非言語的な独言の自己制御機能の可能性を示唆する。言語を前提とした幼児の私的言語の研究に対しても、大きな示唆となりうる。また、独言の発生頻度や音声の内容には大きな個人差が認められるため、その個人差の発達的な連続性を探るため、約半年の後に同じ乳児を対象として、再度、家庭での独言の記録を依頼した。この縦断データについては、上記と同様の分析を現在進めている。 また、保育現場における独言について予備的な調査をおこない、多くの園において音声・生活音が非常に大きいために、独言の生成が妨げられていることが明らかであったため、乳児の生活環境が乳幼児に与える影響についてもあらたに調査を開始した。複数の保育施設において、保育活動中の騒音レベルを測定したところ、先行研究が他の園で示した事例と同様、90デシベルを超える音圧が数十から100回以上記録された。このような音環境における発声内容あるいは音声コミュニケーションの質について調べるため、保育室内の音を録音し、音圧の高い音の内容を分析した。その結果、言語内容の識別できない多人数の混在音声が、その多くを占めていた。他方、保育活動中の音圧レベルの比較的低い保育園における録音について、同様の分析を実施したところ、1人ないし2人の瞬間的な叫び声や笑い声等、言語的内容の識別できる音声が多くを占めた。この調査の結果については、音楽教育実践ジャーナル、および日本赤ちゃん学会・日本発達心理学会のシンポジウム等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
縦断的なビデオデータの取得を含め、おおむね順調にデータを取得し、データの処理が進んでいる。当初予定していた国際学会への参加および海外の研究者との議論が、諸事情により叶わなかった。その代わりに、家庭での縦断的な調査を進めたほか、企業や大学の参加する研究会での発表や保育関係者との議論をおこない、保育や養育の現場に直結した意見を得ることができた。独言は幼児の自己制御を支える機能を果たすことが先行研究から示唆されているが、本調査により、幼児が自らの音声を聴くことのできる保育環境が保障されていない可能性が示唆された。保育の音環境についての配慮を促す研究は近年増えつつあるが、質の低い音環境によってどのような発声行動が阻害される可能性があるか、本研究を通じてその具体的な内容を指し示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに取得されたビデオデータのクリーニング作業および分析作業を続行する。これまで通り時系列で事象を一覧するためにELAN上でビデオを扱い、発声および行動の変化を記述する。定型発達乳児に関しては、縦断データを分析する。0歳児時点のビデオでは音声と行動の変化のタイミングに関連が見られたが、その傾向が1歳以降にみられるかどうか、確認する。また、幼児の私的言語に通じる自己制御の機能が、1~2歳児の独言に生じるかどうか、後期のビデオの分析から明らかにする。これらの結果をまとめ、日本発達心理学会等の学会で報告するほか、学術誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
手続き上、前年度に一括して請求されたため。今年度は残額をデータ分析および成果報告のために使用する。
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Research Products
(5 results)