2014 Fiscal Year Research-status Report
二重特異性抗体を迅速に作製するin vitro技術開発
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26560430
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀬尾 秀宗 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (00561531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒澤 恒平 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (50727170)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗体 / 相同組換え / 遺伝子変換 / 二重特異性抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題で使用するDT40細胞株では、抗体遺伝子座で相同組換えの一種である遺伝子変換が起きている。この遺伝子変換を利用した二重特異性抗体作製系を開発するのが本研究の目的であるが、まず始めに遺伝子変換をモニターする系の開発を予定していた。一般にDT40の抗体遺伝子座での遺伝子変換は、可変領域にフレームシフト変異が導入され細胞表面に抗体を提示しなくなった細胞が、遺伝子変換により変異が修復され、抗体を提示するようになったのを検出してモニターされる。この方法は野生型細胞を利用した簡便な方法であるが、二重特異性抗体作製系に必要な遺伝子変換のモニタリングには適さない。このためより直接的な遺伝子変換モニタリング系の開発に着手した。その結果、二重特異性抗体作製系に必要な遺伝子変換が起きたことを簡便かつ迅速に検出できる系の開発に成功した。 次に、上記の遺伝子変換モニタリング系を用い、二重特異性抗体作製系が可能になるようDT40細胞の抗体遺伝子座の改変を実施した。その結果、二種類の抗原に対する特異性を創出しうる形で遺伝子変換が起きることを示唆する結果を得た。加えてこの遺伝子変換を、TSA(遺伝子変換を亢進させる薬剤)処理により亢進させることにも成功した。また野生型DT40細胞はニワトリ抗体を発現しているため、より医薬品開発に適したフォーマットに改良する目的で、軽鎖、重鎖とも定常領域をヒト型配列に変換することにも取り組み、これに成功した。以上の結果は、医薬品向け二重特異性抗体ライブラリを開発する上で必須な要素技術開発に重要な進展がみられたことを意味する。 一方本研究では、遺伝子変換活性のオン、オフを適宜コントロールできることも重要である。この技術はニワトリ抗体遺伝子座を改変することで実現する予定であるが、それに向けた遺伝子配列の設計を行い、コンストラクション作業を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、26年度中にi) 遺伝子変換モニタリング系の開発、ii) 二重特異性抗体作製系に適した遺伝子変換誘発のためのゲノム改変、iii) ii)で作製した株のTSA処理による遺伝子変換の活性化確認、iv) 重鎖、および軽鎖定常領域のヒト型化、を実施する予定でいた。このうち、i)、ii)、iv) については完全に完了している。iii)においてはi)で開発したモニタリング系を用いた遺伝子変換の確認は完了しているが、より直接的な方法(TSA処理後の細胞の抗体遺伝子配列を解析する方法)による確認は27年度初頭に実施することになった。その一方で、遺伝子変換活性のコントロール技術開発に関しては当初27年度中の開発を予定していたが、前倒して26年度中に作業を開始している。すでにコンストラクション作業の一部も実施しており、研究課題全体としての進捗は概ね予定通りと言え、全体的な開発計画のスケジュール修正はない。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度はまず、DT40細胞の抗体遺伝子座での遺伝子変換活性のオン、オフを適宜コントロールできる技術の開発を行う。これは、26年度に作製した株にさらなるゲノム改変を加える事で実現する。その際、所属研究室が開発した重鎖定常領域改変技術も活用していくことで、効率的な遺伝子改変を実施する予定である。 次に、上記の株を用いて二重特異性抗体取得に使用可能なライブラリ調製を行うべく、ライブラリ調製方法の最適化を行う。様々なパラメターを最適化し、最も効率よく多様性のあるライブラリを作製できる条件を見いだす。 さらに、二重特異性抗体のスクリーニング法の開発を行う。陽性クローンのスクリーニングは精製抗体を用いた ELISAで実施する予定である。このためまずは得られた二重特異性抗体の精製法を確立する。96穴フォーマットのカラムを作製し、ハイスループットな精製法を開発することで、スピーディーな陽性クローンのスクリーニングを実現する。さらに得られた候補抗体が二重特異性を保有するかどうかは、二つの抗原に対するELISAを同時に実施する事で確認する。抗体遺伝子座に様々な改変を加えた事で抗体の発現量が不十分となり、ELISAのシグナルが弱く、陽性クローンのスクリーニングが困難になる事が懸念される。その場合、抗体遺伝子座により強力なプロモータをノックインすることで発現量を向上させる。 最後に、上記のライブラリを用いてセレクションを実施する。当初のセレクショ ン条件は従来の単一特異性抗体取得技術開発において得られた実験条件をベースに行う。得られた候補クローンは、上記 のとおりに確立したスクリーニング手法により選別する。ここで得られた結果を参考に、最終的にはセレクション条件の最適化を行う。セレクションに関するパラメターの最適化を行い、効率的なセレクション条件を見いだす。
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