2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜表面の環境により誘起される分子の三次元構造と認識
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26560436
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松岡 茂 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60456184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脂肪酸 / 側方相互作用 / リポソーム / 熱測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
リポソームITC法で得られるΔG値には,脂肪酸-リポソーム構成脂質間の側方分子間相互作用が摂動として含まれている。リポソームの脂質組成を変えた実験から得られる2つのΔG値の差をとることで,膜内の側方相互作用の影響を得ることができる。この着想に基づき,DMPC,DOPC,eggSMリポソームを用いて,パルミチン酸(C16:0)とFABP3の結合親和性測定をおこない,PC-脂肪酸,SM-脂肪酸相互作用の比較を行った。 その結果,DMPCとDOPCでは疎水性領域の長さの違いに関わらず,ほぼ同じ結合親和性と熱力学パラメータが得られた。また,結合エンタルピー項は負の値,結合エントロピー項は正の値が観測され,リポソームからFABP3に脂肪酸が受け渡される反応は,エンタルピー駆動であることが示された。一方,eggSMでは,正の結合エンタルピー項と負の結合エントロピー項が得られ,eggSMリポソームからFABP3に脂肪酸が受け渡されえる反応は,エントロピー駆動であることが判明した。 またSM膜では,PC膜に比べて自由エネルギー変化量が約4 kJ小さくなっていた。この結果は,SM膜中ではC16:0とSMの間で秩序だった安定な複合体が形成されており, FABP3がSM膜中のC16:0を引き抜くことで,C16:0-SM複合体の解消によりSM分子の運動性が上がることを示唆している。さらに,PC膜とSM膜のITC実験の自由エネルギー変化の差から,C16:0-SM複合体はC16:0-PC複合体より約4 kJ安定化されていることが判明した。この大きさは水素結合およそ一つ分に相当する。C16:0の-COOH基とSM分子の-NH-基または-OH基の間で形成される水素結合が,より安定なC16:0-SM複合体の形成に寄与したものと考察される。 リポソームITC法により,脂肪酸のと膜脂質の側方相互作用の定量に成功した。
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Research Products
(8 results)