2014 Fiscal Year Research-status Report
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26560438
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小椋 章弘 独立行政法人理化学研究所, 田中生体機能合成化学研究室, 特別研究員 (70707843)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖鎖 / ネオ糖タンパク質 / in vivo蛍光イメージング / ターゲティング |
Outline of Annual Research Achievements |
糖鎖をタンパク質の表層に温和な条件下、簡便に導入する方法を確立した。本方法は申請者らが化学合成したリンカーを用い、容易に入手可能なN-結合型糖鎖と目的のタンパク質を順次加えて混合するだけで、タンパク質表層に糖鎖を導入できる。また、精製も反応終了後に分子量フィルターを用いて洗浄を行うだけであり、誰でも容易に実施することができる。本方法は導入の効率性に優れており、一般的なタンパク質であるヒト血清アルブミンに対して糖鎖を数個程度しか導入することができなかった既存の方法に対し、一度に十個以上の糖鎖を導入することが可能である。 続いて、近赤外蛍光を発する色素で標識したモデルタンパク質に対して同様に糖鎖を導入し、合成した人工糖タンパク質を生きているヌードマウスに注射した。近赤外蛍光は生体の透過性に優れていることから、生きたままの動物を用いて蛍光イメージングによってタンパク質の動態を追跡することができる。実験の結果、導入した糖鎖の種類によって人工糖タンパク質の動態や排出経路が大きく変化することが判明した。特に、ある酸性糖を先端に有する糖鎖は肝臓に集まった後に膀胱から尿へと排出される一方、別の糖を先端に有するものは肝臓から胆嚢、そして腸管へと排出される。さらにまた別の糖を先端に持つ糖鎖は肝臓に極めて強く蓄積し、蛍光顕微鏡での観察の結果、肝臓の特定の種類の細胞に選択的に取り込まれていることがわかった。糖鎖は単独では受容体との相互作用が弱く、複数の糖鎖が複数の受容体に同時に認識されることで標的細胞への高い親和性を発揮するとされている。今回申請者らの見出したタンパク質への糖鎖導入法によって初めて、高い糖鎖の密度によって親和性を高めることが出来たと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、申請者らの見出した高効率的複合化系によって各種N-結合型糖鎖の血清アルブミンへの複合化を行った。本方法は温和な条件下簡便な操作で実施することができる。また、合成したネオ糖タンパク質の生体内動態解析を観察し、糖鎖の種類によってその動態が大きく異なってくることを見出し、糖鎖の導入による生体分子のターゲティングに向けて重要な知見を得ることができた。本年度の研究は、研究実施計画の通りに順調に進行したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の過程で、ある種の糖鎖を導入したネオ糖タンパク質が選択的に腫瘍に集積することが示唆された。さらに、本方法では異なる糖鎖試薬を順次タンパク質に作用させることで、タンパク質表面に複数の糖鎖を保持したネオ糖タンパク質を極めて簡便に合成することが可能であるという予備的知見を得ている。複数種の糖鎖による認識パターンは、実際の生体においてターゲティングの重要な要素となっていることが期待されており、新たなメカニズムに基づく生体分子のターゲティングへの応用を目指していく。 また、ある種の糖を末端に有する糖鎖を導入したネオ糖タンパク質が選択的に集積する肝臓の特定の非実質細胞は、これまでに選択的な染色やターゲティングが困難であった細胞種である。現在所属研究室では、組織やイメージングの専門家であるロシア・カザン大学のKiyasov教授やTayurskii教授との共同研究を開始しており、他の細胞腫を含めた細胞選択的なターゲティング法を確立していくことを考えている。
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Research Products
(10 results)