2014 Fiscal Year Research-status Report
アジド基の特性を利用した生物発光による硫化水素検出系の開発
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26560443
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
細谷 孝充 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (60273124)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 化学プローブ / アジド / 生物発光 / イメージング / ルシフェリン |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な生命現象の発現・調節に重要な役割を果たしている硫化水素の生体内局在を、高感度、定量的、かつリアルタイムで観察する手法の開発を目指し、本研究では、生物発光基質であるセレンテラジンの構造改変に基づく新規硫化水素検出系の開発に挑んでいる。とくに、独自のアジド化学のさらなる展開による手法開発を計画し、硫化水素による還元を受けることによりはじめて基質となるような、適切な位置にアジド基を有するセレンテラジン誘導体の開発を目指している。 本年度は、設計したプローブ分子を合成するための基盤構築を目指し、アジド基および適切な脱離基を配置したセレンテラジン類縁体の合成を念頭に、1)脱離基の選定および、2)穏和な縮合環化反応を実現する酸触媒の検討に取り組んだ結果、繊細な官能基を有するピラジン類を合成するための技術を向上させる必要があるという結論に至った。さらに、本検討において、予期に反して、還元反応におけるアジド基の興味深い反応性を見いだした。具体的には、芳香族アジド基の還元反応における反応性は必ずしも高くはなく、芳香環上の置換基や還元剤の違いが結果に大きく影響を与えることを明らかにできた。とくに、これまでの報告ではチオール類はアジド基を速やかに還元するとされていたが、脂肪族アジド基とチオール類との反応は決して速くなく、芳香族アジド基の方がより高い反応性を示すことがわかった。さらに、オルト位に置換基を有する芳香族アジド基の還元の場合には、オルト位置換基の影響が大きいためかチオールとの反応には加熱を要し、その効率を向上させる必要があることが明らかになった。これらの知見は、本研究における今後のプローブ設計に役立つと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していた以上に狙い通りに機能するセレンテラジン誘導体を合成することが困難であることが判明し、プローブ開発の観点からは必ずしも順調に研究が進んでいるとはいえないものの、今後の研究に役立つと考えられるアジド化学における重要な知見が想定外に得られたことから、おおむね順調に研究が進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
挑戦的な本研究課題の遂行を目指し、柔軟なセレンテラジン誘導体の合成を可能とする、多置換ピラジンの合成法の確立を目指す。さらに、本研究の鍵となるアジドの化学に関して、とくに還元反応に関する精査をさらに進めることで目的とする硫化水素検出プローブの開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
予備検討の段階で想定外の知見が得られ、これが重要な成果であると判断したことから、平成26年度は研究の基盤固めを優先した。そのため、当初予定していた高価な試薬類の購入を控え、旅費を使用せず、これらを平成27年度に使用したほうが効率的に研究を進めることができると判断したことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、まず平成26年度に得られた成果を大きく展開し、研究基盤を確立した後、金属触媒等の消耗品費を中心に使用するとともに、得られた成果の学会発表などを行う予定である。
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