2014 Fiscal Year Research-status Report
α-Galエピトープによる超急性拒絶反応を利用した新規抗がん療法の開発
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26560447
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
深瀬 浩一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80192722)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真鍋 良幸 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00632093)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 免疫療法 / α-Gal / グリコシル化 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
α-Galエピトープは,多くの動物が持つ3糖鎖構造であるものの,ヒトはこの糖鎖を持っておらず,代わりにその抗体を大量に保持している.そのため,α-Galは激しい免疫反応を引き起こす.例えば,ヒトにブタの臓器を異種移植した際に起こる急性拒絶反応は,移植片上のα-Galが原因であることが知られている.本研究では,がん細胞をα-Galエピトープで標識し,がんに対してこの急性拒絶反応を誘導するという新たながん免疫療法の開発に挑んでいる.本年は,α-Galの効率合成に注力した.まずα-Galの原料となる3つの単糖のフラグメントをカラムフリーで合成するルートを確立した.その結果,これらの単糖フラグメントを5グラム以上のスケールで合成することに成功し,以降のグリコシル化を検討するうえでの基盤を築いた.続いて,非還元末端の2糖のグリコシル化を検討した.この際,合成ルートの短縮のために,非還元末端の2糖にはチオ糖を用いており,このグリコシル化では,反応性の高いチオ糖のみを選択的に活性化することが鍵となる.種々反応条件を検討した結果,良好な収率で目的物を得られる条件を見出した.しかし,本反応はスケールアップに伴い収率が低下した.そこでマイクロフロー系で本反応を検討した.その結果,フロー系でも良好な収率で目的物が得られる条件を見出し,スケールアップも可能となった.得られた2糖は非還元末端の糖とグリコシル化することで,α-Gal骨格を構築し,これを脱保護することで目的の糖鎖の合成に至った.また,この合成糖鎖が天然のものと同様にヒトの自然抗体に認識されることを示した.さらに,がん細胞の細胞培養系も構築した.リンパ腫細胞であるRaji細胞を用いることとし,この細胞を培養し,現在,この細胞に過剰発現しているCD20の抗体を用いて実験を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は,α-Galの効率合成の合成ルートの確立および,生物実験のための系の構築を行い,以降の生物実験を行うための基盤を築くことを計画しており,ほぼ計画通りの進捗状況である.α-Galの合成において,グリコシル化でスケールアップの際に問題が生じることは,当初から懸念されており,これにマイクロフロー系での反応を適用することで解決した.スケールアップにともなる収率低下は大量合成における大きな問題点であり,マイクロフロー系の適用がその解決につながることを示した. また,合成したα-Galのタンパク質へ導入についてもその基本的な方法論は確立した.BSAをモデルタンパク質として用いて,リジン残基にα-Galを導入できることを示した.本手法は水溶媒中,1時間程度で完了する温和な条件であることから,抗体の標識化にも問題なく適用可能であると考えている.さらに,α-Galとタンパク質の間にリンカーを導入することにも成功し,リジン残基ではなく,しステインを標識することにも成功した.そのため,α-Gal標識分子の合成法はほぼ確立したといえる.加えて,合成α-Galがヒトの自然抗体に認識されることもELISAで示した.この際,α-Galの還元末端のグリコシド結合の立体化学がα体でも問題ないことも確認した. また,細胞実験のための準備も進めており,リンパ腫細胞であるRaji細胞の培養系を構築した.今後,Raji細胞に特異的に発現している膜タンパク質CD20に対する抗体を利用して実験を行う予定であるが,培養したRaji細胞にCD20が問題なく発現していることもFACSにより確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ腫細胞であるRaji細胞をα-Galで標識し,細胞死を誘導できることを示す.Raji細胞には膜タンパク質CD20が発現している.そこで,抗CD20抗体をα-Galで標識し,この分子を用いてCD20特異的細胞死を誘導できることを示す.さらに,この手法をin vivoに適用する.がん細胞としてRaji細胞を移植したマウスに対して,α-Gal標識抗CD20抗体を投与し,がんのサイズの変化,マウスの生存率を見る.この際,通常のマウスは抗α-Gal抗体を持たないため,抗α-Gal抗体を持つヒト化したマウスを用いる必要があるが,これは共同研究者が既に系を確立済みである. また,α-Galは激しい免疫反応を引き起こすため,その副作用が懸念される.そこで,抗α-Gal抗体のエピトープであることが報告されている非還元末端のガラクトースの末端をマスクした化合物を合成する.この際,がん細胞で過剰に発現している酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ切断されるペプチドでマスクすることで,がん細胞上でα-Galが露出するように設計する.この戦略を用いることで,“抗体によるターゲティング”と“がん細胞上での特異的活性化”という2段階の選択を行うことが可能となり,格段の選択性の向上が期待できる. 一方,抗CD20抗体以外のがんターゲティング分子についても検討する.他のがん抗体を利用するのはもちろんとして,新たながんターゲティング分子の探索も検討する.具体的には,がん細胞特異的に発現する糖鎖を認識する分子を探索する.難治性のがんである膵がんを標的とする予定で,糖鎖認識分子を用いたがんターゲティングはこれまでに例が無く,興味深い結果が得られることが期待できる.得られた分子と上記のα-Galを用いた免疫療法を組み合わせ,膵がんの革新的療法の開発を目指す.
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[Journal Article] A cascading reaction sequence involving ligand-directed azaelectrocyclization and autooxidation-induced fluorescence recovery enables visualization of target proteins on the surfaces of live cells.2014
Author(s)
Tanaka, K., Kitadani, M., Tsutsui, A., Pradipta, AR., Imamaki, R., Kitazume, S., Taniguchi, N., Fukase K.
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Journal Title
Org Biomol Chem.
Volume: 12
Pages: 1412-1418
DOI
Peer Reviewed
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