2014 Fiscal Year Research-status Report
地域研究に立脚した戦争と記憶をめぐる社会史・文化史
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26570008
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡田 泰平 静岡大学, 情報学部, 准教授 (70585190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本庄 十喜 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (40584454)
佐々木 啓 茨城大学, 人文学部, 准教授 (50581807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / フィリピン 韓国 / 戦争体験 / 追悼碑 / 児童書 / 性暴力 / 茨城、岐阜、北海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは代表1名、分担者2名、研究協力者2名から構成されており、日本、フィリピン、韓国をその調査対象地としている。 日本に関しては、分担者2名が以下の調査を行った。佐々木啓は、「戦争の記憶」、とりわけ、茨城県水戸市周辺に在住していた人々の戦争体験について、関連する資料を収集し、分析する作業を進めた。とくに、水戸市平和記念館や茨城県立歴史館などの機関を調査するとともに、『水戸空襲戦災誌』をはじめとする戦争体験記の収集した。また、在日朝鮮人の戦争経験についても文献を収集した。本庄十喜は、日本国内の中国人や朝鮮人の強制連行・強制労働の追悼碑・慰霊碑を中心に調査した。具体的には、岐阜市・岐阜公園「日中友好庭園」内の中国人強制連行・強制労働犠牲者慰霊碑、及び付近に設置された満蒙開拓少年義勇軍の顕彰碑である。また、北海道仁木町にある中国人強制連行犠牲者追悼碑や、朱鞠内湖付近にある「笹の墓標展示館」とダム建設および深名線敷設工事で犠牲となった労働者たちの慰霊碑等の調査もした。 フィリピンに関しては、代表者と海外研究協力者がそれぞれ独自の調査を行った。岡田泰平はBC級戦犯裁判資料を用いセブ・マクタン島コルドバ町における性暴力事件の実相を明らかにし、その上で遺書、東京裁判資料、嘆願書等からこの事件についての当事者の記憶と日本社会におけるその記憶の受容について分析した。また、同地のフィールドワークも行った。カール・チェン・チュアはフィリピンでの英語やタガログ語での児童書を収集し、そこに現れる日本兵像や戦争についてのナラティブを分析した。 韓国に関しては、研究協力者金賢信が韓国国会図書館でアジア太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争と三つの戦争の従軍者及び被害者について、特に国家補償に関わる文献を渉猟した。このほかに韓国内の戦争に関わる「歴史認識」に関する著書を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個々の構成員の研究調査活動についてはおおむね順調に進んでいる。特に構成員による口頭発表および論文・著書刊行については非常に活発に行うことができた。 しかし構成員間の情報交換、研究の方向性の確認と修正、問題意識の共有といった面においては不十分であった。主たる理由は構成員の地理的分布である。本科研費応募時には東京に4名、マニラ1名だったが、現在では勤務先の都合から東京1名、マニラ1名、茨城1名、北海道1名、静岡1名となっており、日本国内の構成員のみでも集まれる機会が非常に限られてしまっている。 このような状況の変化に起因し、2014年度は定期研究会を一度も持つことが出来なかった。 また、社会運動団体の資料の収集も進める予定だったが、その主たる担当である二名が東京を離れてしまい、また新勤務先での学務・教務等に慣れることも必要だったことに起因し、十分な時間が取れなかった。こちらについては進んでいない。その反面、東京以外での研究者とのネットワーク作りや当事者の聞き取りといった作業をできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度については、当面はそれぞれの研究の更に進めていく。日本に関しては、特に茨城、北海道、岐阜、静岡における戦争体験と記憶・表象の問題について調査する。端的には、当事者への聞き取り、記憶を保存する運動の調査、遺骨返還運動、碑の設置にまつわる運動等に注目していきたい。前述したとおり、構成員の地理的分布もあることから、日本に関しては東京外での調査研究活動の重点化へと軌道修正をしていく。 2015年7月には北海道での初回定例研究会を予定している。日清戦争についての研究、とりわけ北海道と韓国全羅南道のつながりを調査してきた井上勝生氏を呼び研究会を開く予定である。また、2016年3月にはマニラ・アテネオ大学でのシンポジウムを企画している。これらの集まりを通して、構成員間の情報交換や問題意識の共有を諮る予定である。 フィリピンに関しては、次の通りである。児童書の研究については、更なる収集を進めると共に、児童文学として戦争を語るという行為が持つ、歴史認識に対する意義と限界についての考察を進める。またセブの地方史から日本軍性暴力を捉え直すと共に、セブにおけるBC級裁判間の関係を明らかにしていきたい。 韓国に関しては、更なる文献調査を進めると共に、韓国在住の研究者、日本の朝鮮史研究者とのネットワーク作りを図っていきたい。
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Causes of Carryover |
当初の予定と比べ、研究費の使用が少なかった。前述したとおり、新勤務先初年度ということにより通常よりは多い個人研究費がそれぞれの大学から支給されたこと、および定期研究会を開くことができずそのための謝金等が発生しなかったこと、が主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年7月には北海道での定期研究会、2016年3月にはフィリピン・マニラでのシンポジウムを開催する予定である。その他には、各構成員の個別研究調査のために使用する予定。
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Remarks |
本庄十喜著,「戦犯を事後法で裁いた東京裁判の意義と課題」『週刊 日本の歴史』通巻44号、朝日新聞出版, 2014年5月,21頁 本庄十喜著, 内海愛子他著『戦後責任―アジアのまなざしに応えて』,文献紹介,『歴史地理教育』NO.834, 2015年5月, 84-85頁 岡田泰平著, 小菅信子, ヒューゴ・ドブソン編著『戦争と和解の日英関係史』, 文献紹介,『歴史評論』第781号, 2015年6月(予定)
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[Presentation] Komiks2015
Author(s)
Karl Ian Cheng Chua
Organizer
"The Battle of Manila" Symposium
Place of Presentation
Ayala Museum (Makati, Metro Manila, The Philippines)
Year and Date
2015-02-21
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[Presentation] マンガにおける戦争2014
Author(s)
Karl Ian Cheng Chua
Organizer
マンガを通じての平和教育
Place of Presentation
広島市西区民文化センター(広島県広島市)
Year and Date
2014-11-08
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