2014 Fiscal Year Research-status Report
社会的弱者層が駆動する新たな在地コミュニティビジネスの実証的展開と成立要件の解明
Project/Area Number |
26570016
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
田中 樹 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (10231408)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 境界農学 / 社会的弱者層 / 在地ビジネス / 地域開発支援 / 貧困問題 / 生業複合 / 東南アジア / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
地域開発支援において、零細農民を含む社会的弱者層は支援や庇護の対象として扱われてきた。本研究では、東南アジアとりわけベトナム中部を主要な対象地域とし、これらの人びとによる小規模な生業活動の特性を活かし、地域経済をむしろ駆動するような新たな在地コミュニティビジネスの形成に関するフィールド実証を行う。社会的弱者層(少数民族、零細農民など)を主要なアクター(担い手)とする大胆な逆転の発想により、いまだ有効な切り口の見えない貧困削減への突破口を探る。 設定される研究目的は、1.先駆事例として「放牧性小家畜飼養」を軸とする在地コミュニティビジネスを実証する、2.小規模経営を基盤とする多様な在地コミュニティビジネスの成立要件と展開可能性を明らかにする、3.これらを事例群とする実践的地域開発支援アプローチのモデルを提案する。 フエ市近郊のホンチャ県ホンティエン社にて、協力農家(山岳少数民族)とともに放牧性小家畜(在来ミニブタ飼養、ホロホロ鳥飼養、養蜂)の試験農場を設置し、在来生業システムに複合させる実証試験を開始した。参加農民の発案により、試験農場に現れる野生の鶏を捕獲し、飼養鶏との交配種をつくる試みが加わった。ミニブタ在来種の飼養は、協力農家により管理され、繁殖豚を20頭レベルで維持することで在来種の系統保全をし、一方で産み出される子豚や肥育しての販売トライアルを開始した。ホロホロ鳥は、鶏の病気(ニューカッスル病など)に罹ることなく旺盛な生育を見せている。養蜂は、アカシア造成林の周辺に養蜂箱を設置し、農薬などに曝されない状態で生産されている。収穫されたハチミツをペットボトルに小分けして予約販売し、その収益の一部を貧困地区の学習支援活動に充てる活動を、都市部(フエ市)の市民有志とともに始動させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究活動は概ね予定通り進捗している。主対象地域であるベトナム中部の山間部に協力農家(山岳少数民族)とともに放牧性小家畜(在来ミニブタ飼養、ホロホロ鳥飼養、養蜂)の試験農場を設置し、餌やりや繁殖が順調に行われている。住民有志の発案を取り入れ野生鶏の交配種の飼養を新たに始めたことは、在来知を活動形に転換した好事例である。小家畜の一部は、協力農家のマネジメントの一環として販売され収益を上げつつある。養蜂から得られるハチミツは、市民有志の協力により小規模ながら予約販売され、その収益の一部が貧困地区の学習支援活動に充てられるなど、小規模な在地ビジネスによる貧困対処の流れをつくりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りに研究活動を進める。放牧性小家畜の実証試験の進捗に合わせて、それを事例とする在地コミュニティビジネスの成立要件の解明につながる情報の蓄積を意識する。住民有志の発想による野生鶏の交配種からいわゆる地鶏をつくる取り組みのスケールアップを行う。貧困対策については、養蜂から得られる蜂蜜を用いた都市部での予約販売トライアルと貧困地区での教育支援を組み合わせる取り組みが先駆事例となるように経験の蓄積を図る。平成27年7月下旬にベトナムとインドネシアから研究者を招へいし、国際セミナーを行う。研究成果を対象地域に迅速に還元するために、ベトナムでの国際協力案件の形成支援を行う。
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