2014 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダー・エスニシティ・多世代共生に着目した震災復興と減災方策に関する研究
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26570019
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60106010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 順子 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (00213942)
松岡 広路 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10283847)
井口 克郎 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 講師 (10572480)
RONNI Alexander 神戸大学, その他の研究科, 教授 (40221006)
中原 朝子 神戸大学, その他部局等, 助教 (50624649)
坂本 千代 神戸大学, その他の研究科, 教授 (80170611)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ジェンダー / 男女共同参画 / アクションリサーチ / 震災復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査対象地において、被災当事者が復興の主体者として、新たな地域づくりを行うための「復興市」を開催する支援及びワークショップを開催し、松岡、井口、朴木、アレキサンダー、坂本、中原他補助学生が各々参画した。ワークショップは、本研究が目的としている「周辺化され易い人々」が復興過程において主体者になる(周辺から中心に向かう)過程を明らかにするアクションリサーチの一環である。そのため「復興市」の準備過程から実施に至るまでの間、被災当事者及び地域住民との協働関係を密接にし、信頼関係を構築した。一連のアクションリサーチの過程で、適宜、研究対象者である女性被災者等にヒアリングを行った。ヒアリングでは女性被災者の中での「周辺化」が生じていること、発災時以前からある人と人との関係性が被災から復興に向かう過程に反映されること等が分かった。また、調査対象者へのヒアリングの内容を相対化して把握するために、被災自治体3市の男女共同参画担当者にもヒアリングを実施した。さらに、被災地域のジェンダー問題の背景を把握するため、被災地の産業(水産業)の復興事情についても若干の調査を行った。以上のヒアリングの結果を得て、次年度には生活実情調査(アンケート調査)を実施する予定であり、その調査項目を検討した。 「周辺化され易い人々」が「周辺から中心に向かう」過程については、地域公民館の役割が大きく、研究分担者である松岡が中心となり、公民館運営とその課題について参与観察を行った。「エスニシティ」に関わっては、アレキサンダーが調査対象地の隣接地域にて復興に向けてのワークショップを開催し、復興課題を分析した。また、朴木、岡田、坂本、中原は神戸大学男女共同参画推進室主催の「国際ワークショップ」にて、アジアの国々の減災にむけてのジェンダー対応策について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成26年度には、当事者性の共有(関係づくりワークショップ)、生活実情のプレ調査(ヒアリング)、生活実情調査(アンケート調査)を各々行うことを予定していた。実際には、調査対象である被災者との関係づくりワークショップは「復興市」を行うという当初には予期しなかった成果を生んだ。当初の目的であった被災者との「当事者性の共有」は十分に遂行できたと思われる。 また、生活実情のプレ調査として、「復興市」の準備過程において当該地の女性に個別ヒアリングを実施した。その結果、調査定点として設定した地域の生活実情を相対化して理解する必要があることが分かり、当初には予定していなかった当該地以外の被災自治体の男女共同参画担当者もヒアリング対象とし、さらに水産業の復興についても若干のヒアリングを行った。これらの当初の予定外調査を実施したため、生活実情調査(アンケート調査)を行うための調査項目づくりはより充実したものとなった。ところが、「復興市」開催に伴う当該地の被災者の生活都合の変化により、調査時期を調整せざる得ず、調査項目の検討まではできたがアンケート調査の実施には至らなかった。このようなズレはアクションリサーチという研究方法を取る際には、やむを得ないと自覚している。また、当初には平成27年度に実施予定であった「復興の街づくりタウンミーティング」について、時期を早めて開催に着手できた。エスニシティに関する調査は調査定点では対象者が少なく、実施できなかったが、アレキサンダーを中心に国際的知見を得ることで代替えした。以上より、研究計画は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には生活実情調査(アンケート調査)を実施する。本研究は研究倫理として個人情報への配慮はもちろんのこと、「調査公害」を引き起こさないこと、また「復興に資する研究」を行うことを研究実施の基本としている。特に「調査公害」をもたらすことがないように、調査対象地、調査対象者の実情に寄り添い、復興の支援となる調査を心がけている。そのために、平成27年度には生活実情調査の実施を第一の目的とするが、あくまで被災地・被災者の生活都合を優先して調査の実施時期を定めることとする。 また、復興の街づくりタウンミーティングについては、実際には平成26年度に着手できたため、生活実情調査を行う際にはタウンミーティングの実施過程をにらみつつ調査の実施時期を調整する必要がある。したがって、当初計画した調査時期と実施事項の順番を再検討する予定である。さらに産業の復興過程(復興程度)の調査、調査対象地以外の被災地調査を加えることにより、調査対象地及び調査対象者の特徴を明らかにする。 平成27年度にはエスニシティの問題を深めるが、「東日本大震災の中でのエスニシティ問題」という枠組みについては、調査対象地を変更ないしは増加し、「災害復興過程におけるエスニシティ問題」として再検討する予定である。
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Causes of Carryover |
調査対象地において「復興市」の開催があり、その実情に調査時期を合致せざるを得ず、生活実情調査を実施できず、アンケート調査のための経費を執行できなかった。また、調査対象を拡大したため当初計画の調整に迫られ、旅費使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては生活実情調査実施のための調査旅費、調査結果を分析するための統計ソフトの購入と人件費(学生アルバイト)計費を計上する。
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Research Products
(9 results)