2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26580008
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 義浩 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40241400)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 三教交渉 / 捜神記 / 法苑珠林 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究を実現するため、本年はその対象を選定し、その内容を理解することに努めた。唐代に道世が著した仏教典籍『法苑珠林』には、東晉の干宝が著した『捜神記』が、感応縁ばかりでなく、述意部にも引用され、それへの反論が述べられている。これを比較・検討の対象に定めた。 ところが、『捜神記』は、志怪小説とされ、儒教との関わりは十分には解明されていない。そこで、『捜神記』における儒教との関わりを追求するために、干宝の理論を代表する「五気変化論」と、儒教の天人相関説とを比較した。「五気変化論」では、「順常」という正常な変化は四種に分けられ、変化する際の「気」「形」「性」の変容と不変が整理されている。また、「妖眚」という常ではない変化は、人が「気」の「反」・「乱」・「貿」により変化することであり、これこそ儒教の天人相関説の中心に置かれるべき変化であった。干宝は『晉紀』総論で示した上帝の二心への疑義を解決するため、『春秋左氏伝』に従って「神道」のあり方を「事」を中心に『捜神記』に記録した。すなわち、『捜神記』は、『春秋左氏伝』が史書としての性格を強めていたことを背景に、史部に著録されていたが、本来は儒教起源の語彙を多く含む著作であった。 こうした『捜神記』の研究成果を踏まえ、次年度は、『法苑珠林』に引用された『捜神記』における儒教的語彙を計量学的に追求する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年は、中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究を実現するため、本年はその対象を選定し、その内容を理解することに努めたが、対象を絞り込むのに、予想以上の時間を要した。『捜神記』に道教的要素があるため、当初の仏教・儒教交渉を超えて、仏教・儒教・道教の三教交渉へと問題が膨らんだ。挑戦的研究であるため、あえて問題を限定することなく、このまま継続していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
『法苑珠林』が仏教的宇宙観を展開しようとしたとき、最も意識したものが『捜神記』である。『捜神記』の儒教的・道教的諸要素のうち、何を取り入れ、何を批判した。仏教の普及に向けて、中国伝統の儒教思想と、仏教とともに台頭してきた道教に、仏教がいかなる対応をみせたのか、『法苑珠林』の分析から明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
予定どおり執行しましたが、微細な誤差があり、残金が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金を組み込んだうえで、予定どおり執行したいと思います。
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Research Products
(9 results)