2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26580008
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
渡辺 義浩 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (40241400)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 『法苑珠林』 / 『捜神記』 / 五気変化論 / 唯識思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究を実現するため、前年度はその対象を選定し、その内容を理解することに努めた。唐代に道世が著した仏教典籍『法苑珠林』は、仏教のみならず儒家、道教、讖緯、雜著など400種を超える典籍を引用している。それらの中でも、東晉の干宝が著した『捜神記』は、『冥祥記』に次いで二番目に引用が多く、また事例集である「感応縁」の部分ばかりでなく、編目の大意を述べた述意部にも引用され、しかも『捜神記』の見解に対する反論が述べられている。両者を比較・検討することにより、中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究が可能になるのではないか、という仮説を立てた。 本年度は、前年度の成果を論文化し、東京大学東洋文化研究所の紀要に、渡邉義浩「『捜神記』の執筆目的と五気変化論(『東洋文化研究所紀要』168,2015年12月,1~31頁)として発表した。その一方で、 中国仏教経典に占める儒教起源語彙の計量学的研究を継続しており、その成果は、「『捜神記』の引用からみた『法苑珠林』の特徴」として完成した。これは、2016年度中に、大東文化大学東洋研究所の紀要『東洋研究』に発表される予定である。そこでは、『法苑珠林』の編者である道世が、仏教的宇宙観を展開した際が、その対峙性において、最も意識したものが『捜神記』であったことが明らかにされる。それは、『捜神記』が、数多くの変化を記録するだけではなく、それらの原理を追求する「五気変化論」という理論を有していたことによる。『成唯識論』を訳した玄奘の影響を受けた道世は、唯識思想により干宝の五気変化論を打破することで、仏教の優位性を明確に示したのである。
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