2015 Fiscal Year Research-status Report
日韓山岳宗教の比較研究―その聖地観・神観念・宗教的実践をめぐって―
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26580011
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
須永 敬 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (90390004)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 山岳宗教 / 修験道 / 英彦山 / 智異山 / 国際情報交換(大韓民国) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、北部九州の英彦山・朝鮮半島南部の智異山における山岳宗教聖地の調査研究を通して、日韓山岳聖地の構成要素を把握するとともに、日韓双方の山岳宗教の歴史的変遷を解明し、それぞれの山岳宗教が地域社会にどのような民俗的意義を有しているのかを明らかにしようとするものである。 上記の課題を達成するため、2年目となる本年は、朝鮮半島南部の智異山の聖地構成・神観念・宗教的実践に関する文献調査・現地調査を集中的に実施する予定であった。ところが、韓国におけるMERSの流行を受け、年度前半期に予定していた山内聖地の調査を中止せざるを得なくなり、当初予定していた調査を十分に実施することができなかった。本年度実施した韓国調査は、智異山南西部の寺院・宗教施設の現地踏査および宗教者への聞き取り調査が中心となり、山内聖地の踏査については次年度に持ち越すことになった。ただ、国立順天大学校智異山圏文化研究院・国立慶尚大学校慶南文化研究院において、韓国の智異山研究の最前線の研究者と情報交換を行うとともに、貴重な資料を得ることができたのは、本研究を推進していく上で大変有益であった。 韓国での調査が実施できなかった本年度前半期には、英彦山山内聖地の現地調査を実施した。特に英彦山信仰の特色ともいえる窟の信仰に注目し、その歴史的変容と現代における宗教実践について詳しく調査を行った。 また、本年度は研究公表に力を入れた年でもあった。8月に国際歴史科学大会(ICHS)、9月に日本山岳修験学会、11月に東アジア山岳文化研究会と、3学会において口頭発表を行った。また1本の論文を紀要に報告するとともに、現在投稿中の論文もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先述のとおり、年度前半期の韓国におけるMERSの流行は当初予期していない出来事であったが、韓国の研究者・研究機関の協力を得ることにより、智異山南西部の山岳寺院(七佛寺・双渓寺・燕谷寺・南嶽祠址・泉隠寺・華厳寺・大源寺等)を踏査するとともに、寺院関係者や民間宗教者への聞き取り調査を実施し、短期間ながらも効率的な調査を実施することができた。また、智異山に関する貴重な資料の数々も入手し、その分析を進めることもできた。なお、本年度延期となった智異山における山内聖地の現地踏査については、計画を後倒しし、平成28年度前半に実施する予定である。 また、韓国での現地調査が実施できなかった期間、英彦山の現地調査に入ることができ、昨年度の補充調査を行うことができた。特に7月に行われた玉屋神社例祭においては、山内第一の聖地ともいえる玉屋窟の調査が許され、その詳細を知ることができた。 また、本年より本研究課題の研究成果を公表し始めたが、国際学会2件(いずれも招待)、国内学会1件と、3件の発表を行うことができた。また論文も2本(投稿中を含む)執筆した。このように、本研究課題のアウトプット面に関していえば、当初の計画以上の進展といえる。 上記のことから、本年度の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とするのが妥当であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる平成28年度は、本年度調査が充分にできなかった智異山の現地調査を集中的に実施する予定である。また、英彦山の山麓地域、および遠隔地域における補充調査も実施する。また、これまで行ってきた現地調査の成果に加え、文献資料の分析も引き続き行っていきたい。特に智異山については、国立慶尚大学校・国立順天大学校によって近年多くの資料集が次々と刊行されており、これら最新の情報を取り入れた形で研究をまとめたい。また、本研究の成果については、国内学会発表を実施するとともに、海外の学術誌においても発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度前半に韓国にてMERSが流行し、現地調査が実施できず、渡航旅費、宿泊費および現地調査協力者への謝金等の支出が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度前半に韓国における現地調査を実施し、その渡航旅費・宿泊費・現地調査協力者への謝金に充てる。
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