2014 Fiscal Year Research-status Report
14世紀ヨーロッパのキリスト教霊性に見られる「近代的自我」の形成への萌芽
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26580016
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
須沢 かおり ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50171195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教霊性 / 近代的自我 / 14世紀 / アビラのテレサ / エディット・シュタイン / 神秘家 / 内面化 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のねらいは、中世以降のキリスト教霊性のなかに近代的自我の形成への萌芽を問うことにある。 1. 今年度は14-15世紀のカルメル会の霊性に見られる近代自我の端緒を明らかにするために、アビラのテレサの霊性と現代キリスト教への影響について、研究を進めた。スペイン語一次文献の読解に時間をとられたとはいえ、先行研究との関連と現代におけるテレサの解釈まで、論究を進めることができた。 2014年4月にアビラのテレサについて東京での講演を1回、キリスト教霊性誌『カルメル』への連載論文3本、さらに、アビラのテレサの影響を受けた、現代思想家、カルメル会修道女のエディット・シュタインに関する単著『エディット・シュタインの道程ー真理への献身』(知泉書館)を出版した。この著作は日本宗教学会会誌『日本宗教研究』にも書評が掲載され、学会においても反響が見られる。 自己の内面へ向かい、そこで神に出会うアビラのテレサの霊性は、近代的自我への端緒となり、現代の思想家、哲学者に多大な影響をもたらしたことが明らかなり、今後も資料と視座を広げつつ、展開していく。
2. 海外共同研究者のドイツ、ミュンスター大学のアンドレアス・ミュラー教授、イタリア、ローマの強行庁立聖書研究所教授のラインハルト・ノイデッカー教授にはヨーロッパ出張中に度重なる研究討議をし、国際共同研究を進展させることができた。来年度中にはドイツにおいて、研究成果を出版することになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究の整理と関連一次史料の収集・読解を終えた上に、「キリスト教霊性と近代的自我」という大きなテーマとの深い関連も明らかになったため、予想以上に進展したと言える。初年度であったが、単著1点、論文3点を公刊し、今後の研究への足がかりをつかむことができた。 また、海外共同研究者とも緊密に連絡をとり、共同研究と今後の研究成果の発表についての具体的進展を見ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に発表した著書、論文への反響、批判をもとに、今後はさらなる研究成果の発表を計画している。 引き続き、キリスト教霊性家、神秘家の著作を精読し、近代的自我の萌芽となるものを検討する。また、今年度は、ヨーロッパ中世期、14世紀にも盛んであった聖母マリアへの信心の霊性が現代においてどのように生かされ、実践されているかを探るため、フランス、ルルドにて調査、資料収集を計画している。本年度に引き続き、夏季に二ヶ月程度渡欧し、ドイツ、イタリアの大学、研究機関における一時資料の精査を行うとともに、国際学術集会での研究者との交流と、日本からの研究成果の発信に向けて、さらなる努力をする。
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