2015 Fiscal Year Research-status Report
14世紀ヨーロッパのキリスト教霊性に見られる「近代的自我」の形成への萌芽
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26580016
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
須沢 かおり ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50171195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教霊性 / 近代的自我 / ヴィション / 聖母出現 / 個人化 / 中世末期 / 近代 / 海外共同研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年計画の2年度目にあたる平成27年度の研究は、14世紀から近代の端緒である17世紀にかけてのキリスト教霊性をめぐる多様な展開と近代的自我の形成について考察した平成26年度の研究を踏まえて、今年度は特に、霊性におけるヴィションと顕現、霊的な経験における自己意識について考察した。中世末期に及んで、内的、個人的に知覚される「ヴィション」と、外在されると知覚される「顕現」との区別が霊性史において把握された点も重要な成果であった。 以上の研究実績は、ドイツ語による論文として、ドイツの出版社からの共著として出版された。また、キリスト教霊性誌の『カルメル』に連載論文4本、さらに、ノートルダム清心女子大学キリスト教文化研究所年報に、論文を1点発表した。
27年夏にはドイツ、フランスへ研究、調査に出かけ、海外共同研究者のドイツ、ミュンスター大学のアンドレアス・ミュラー教授、教皇庁立聖書研究所のラインハルト・ノイデッカー教授とも緊密な研究連絡、討論を行うことができた。また、中世から近代にかけてのキリスト教霊性史において重要なテーマである、聖母出現とその受容について調べるために、フランスの巡礼地ルルドで研究、調査を行った。聖母出現はヨーロッパ中世にも多く見られたが、近代に入って、個の確立と、信仰の実存化、個人化、情緒化の流れの中で、いわば近代の科学主義、合理主義に対抗する動きとして、ルルドの聖母出現を捉えることができることがわかった。この点については、今後の研究の展開へと繋げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
14世紀から近代に至るキリスト教霊性のテキストの収集、読解、分析は、夏季のドイツ、フランス滞在が予定通りに実現したこともあり、十分に行うことができた。中世末期と近代とのキリスト教霊性の連結についてはいまだ課題は残るものの、当初の目的に沿って、展望は示された。以上のそれぞれについて活字論文が公表されたことも考え合わせるなら、本年度の研究は、おおむね順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで発表した著書、論文への反響、批判をもとに、今後さらなる研究成果の発表と、新たなる研究計画の着想へと進展させるつもりである。このために、28年度夏季にも渡欧し、海外共同研究者との討論、打ち合わせを通して、研究成果の発信のための計画と実施を行う。28年度以降、研究成果を著書として出版する計画を立て、これに向けて論文執筆を続けている。
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