2016 Fiscal Year Annual Research Report
The beginning of the developmentof "modern ego" in the Christian spirituality of the 14th century Europe
Project/Area Number |
26580016
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
須沢 かおり ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50171195)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教霊性 / 近代的自我 / 新しい敬虔」(ディヴォティオ・モデルナ)運動 / 聖書 / 黙想 / 祈り / 中世末期 / キリスト教的実存 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は3年間の研究の最終年度にあたり、これまでの研究をまとめることに中心をおいた。 4-15世紀のキリスト教霊性に新しい風を吹き込んだ「新しい敬虔」(ディヴォティオ・モデルナ)運動に見られる宗教的心性の変化について論究した。特にトマス・ア・ケンピスの『キリストに倣いて』(Imitatio Christi)に見られるキリストの人間性に対する崇敬と、個人的、情緒的、内面的、日常的な傾向が「近代的自我」の先駆けとなっている点をテクストに即して解明した。この書物は聖書についての黙想、祈りが多く盛り込まれているため、海外共同研究者のノイデッカー教授の研究協力を受け、近代的な自我の成立と発展のなかで、聖書がどのように読まれ、黙想されているか、その特徴を明らかにした。ノイッデッカー教授は2016年の11月に来日し、14-17世紀のキリスト教霊性家の著作、テクストの解読のために、ギリシア語、ラテン語、中高ドイツ語に関する専門的知識を提供し、ノートルダム清心女子大学で研究代表者とともに、聖書と霊性に関するセミナーを開催した。またノイデッカーは2016年9月にRabbinic Literature - A Rich Source for the Interpretation and Implementation of the Old and New TestamentsをGregorian & Biblical Pressより出版し、聖書の霊性と読み方、さらに近代の自我との関わりを論究した。研究代表者の須沢は2016年の夏に渡欧し、海外共同研究者であるドイツ、ミュンスター大学のミュラー教授とも意見交換、討議を進め、ミュラー教授が居住するドイツ、フライブルクにおいて「中世と近代のあいだー近代的自我の形成への萌芽」と題する研究集会を行った。ドイツのみならず、スイス、オーストリアからの研究者の参加を得て、活発な討論と意見交換がおこなわれた。また須沢は昨年に引き続き、フランス、ルルドにおいて近代的霊性の特徴についての調査を行い、論文にまとめ、発表した。
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