2015 Fiscal Year Research-status Report
日本流入の中国書画に関する新旧収蔵家ネットワークの復元的研究
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26580023
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅野 智明 筑波大学, 芸術系, 教授 (90272088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 知之 安田女子大学, 文学部, 講師 (60559649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 美術史 / 社会ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本が、近代以降に流出した中国書画の一大集積地となった要因について、日中双方の収蔵家間の交流を網羅的に追跡し、そこに認められる収蔵家間ネットワークの形成とその構造的特徴の側面から解明するものである。研究代表者・菅野智明は、中国書画日本流入の鍵を握る内藤湖南、羅振玉に焦点を当て、内藤を介した王羲之書跡の関西方面での流入を系統的に辿るとともに、羅振玉が実は東京でも日本人士とネットワークを形成していた点に鑑み、その分析に着手した。研究分担者・増田知之は、昨年度に引き続き内藤湖南の交流関係を、彼の書簡から跡づける作業を進めるとともに、『十札法帖』を例に、中国法帖の日本流入の足跡を追った。また、近代の書画流通の前史として、東アジアという広い視点から、中国明清時代と李朝時代における法帖流通の実態比較、江戸時代における書籍の流通を背景とする草書(御家流)の浸透などにも検討を加えた。研究協力者・下田章平は、羅振玉の後、日本への中国絵画流入に寄与した顔世清に焦点を当て、彼が大正11年に中華民国公使館で開催した展覧会出陳作品について、各々の逓蔵過程を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、内藤湖南、羅振る玉、顔世清といった当時の鍵となる収蔵家を対象として、彼らの日記や書簡のほか、当時の流入書画の影印出版物や定期刊行物所収の関連記事を手がかりに、流入書画の収蔵家に関するネットワーク形成の複合的な状況が、より詳細に解明できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、本研究の最終年度となる。27年度までに解明してきた収蔵家間ネットワークについて計量的な分析を試み、その構造的な特質を探るとともに、それが日本における中国書画流入に果たした役割についても考察し、研究成果として取りまとめる。
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Research Products
(5 results)