2014 Fiscal Year Research-status Report
映画がたどる高齢者介護の40年間 1973~2013年
Project/Area Number |
26580026
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (40151667)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 芸術学 / 映画研究 / 医療・福祉 / 高齢者介護 / 比較映像論 |
Outline of Annual Research Achievements |
だれもが年をとる。かつて親や祖父母の世話をしていた人も、やがて自分が介護されたり、施設に入れられたりする。「高齢者介護」は人生の避けがたい局面として、多くの映画のなかに描かれている。本格的な「高齢者介護映画」は、1973年に日本で制作された『恍惚の人』が、世界初の例である。しかし、日本映画が辿る高齢者介護の変遷を本格的に考察した研究は、まだ存在しない。 本研究の第1の目的は、高齢者介護をめぐる家族像・社会像の変遷に注目しながら、「高齢者介護映像表象史」を構築することである。第2の目的は、2000年代に興隆した「外国」の高齢者介護映画に目を向け、日本と外国の高齢者介護映像表象を比較分析することである。本研究によって、「映画研究」が「老年学」という学際的領域に貢献しうることを期待しながら、2年間計画の初年度には、以下の研究実績をあげた。 (1)日本の高齢者介護映画を収集し、その1本ずつに「ショット分析」をほどこしながら、つぎの① ②の2点に関するデータを検出した。①高齢者患者と介護者は、どのような人間関係(家族関係)にあるか? ②患者と介護者を取り巻く社会環境は、どのように設定されているか? (2)1973年から今日までの「患者像/介護者像」の変遷や「高齢者介護を取り巻く社会環境」の変遷を、「高齢者介護映画」というジャンルの小史として構築する試みを行った。(2)に関しては、次年度に検証すべき要素があるため、まだ構築が完成してはいない。次年度に検証すべき要素とは、日本映画だけでなく外国映画における高齢者介護のテーマも考察し、わたしが構築しようとしている小史がグローバルな視野において適切と言いうるかを突き止めることである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおりの進捗状況であり、おおむね順調に進展していると判断しうる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年計画の2年度(最終年度)は、予定どおり、外国映画をも視野に入れ、日本映画における高齢者介護のテーマの表象と外国映画におけるそれとの比較を行う。すなわち、比較映像論を展開することになる。こうしたグローバルな視野にたって、日本における「高齢者介護映画」の小史の構築を完成させることが、最終目標である。 また、国際会議における研究成果の発表も、2年度の目標として予定している。
|
Causes of Carryover |
最終年度には研究成果を公表するための外国旅費や、入手困難であった研究資料の購入(入手経路が判明した)など、支出額が大きくなることが明らかになってきたため、平成26年度の予算から70数万円を確保した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
確保した次年度使用額によって、2つの計画を実行する予定である。ひとつは、研究成果を発表するための外国旅費として使用すること。もうひとつは研究資料(具体的にはDVD映像資料)の物品購入費として使用すること。
|