2014 Fiscal Year Research-status Report
勅使河原宏映画関連資料による「モンタージュとしてのアーカイヴ」研究
Project/Area Number |
26580029
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
久保 仁志 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 助手 (00626765)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アーカイヴ理論 / 映画理論 / 芸術理論 / モンタージュ理論 / 日本映画 / インターフェース開発 / 美術 / いけばな |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は主に財団法人草月会資料室(以下資料室と呼ぶ)所蔵資料の物理的腑分け作業およびリスト化、勅使河原宏フィルモグラフィの刷新、作業プロセスの撮影、および一部資料のデジタル化(主に台本類)、またインタヴューを行った。 ● 資料室所蔵資料の物理的な分類作業およびリスト化:映画作品を一番大きな単位として分類・リスト化を行った。分類しつつ保存管理に必要な処置を適宜施した。下位の単位としては台本・カット表等の種別を用いた(26作品:342件。《北斎》:1件、《いけばな》4件、《生きていてよかった》1件、《東京一九五八》2件、《ドラムと少年(仮題)》1件、《ホゼー・トレス》2件、《おとし穴》8件、《いのちVITAー蒼風の彫刻》1件、《砂の女》17件、《ホゼー・トレス PartII》1件、《白い朝》5件、《STRIKE!》11件、《われらの時代》1件、《他人の顔》19件、《燃えつきた地図》30件、《爆走》1件、《1日240時間》10件、《生命の水》2件、《サマー・ソルジャー》14件、《新・座頭市 虹の旅》8件、《新・座頭市 夢の旅》7件、《アントニー・ガウディ》155件(一部未リスト化)、《利休》38件、《豪姫》整理中、《バップ・ラップ・ヘップ —愛の法則—》3件)。●勅使河原宏フィルモグラフィの刷新:作成済みであった勅使河原宏フィルモグラフィに野村紀子(元勅使河原プロダクション)氏作成のフィルモグラフィと資料から得られる情報を反映し、刷新した。● 作業プロセスの撮影:物が資料へと生成するプロセスを記録。● 一部資料のデジタル化:損傷が激しい台本類を優先的にデジタル化。● インタヴュー:2014年8月1日東京国立近代美術館フィルムセンター岡田秀則氏、2014年8月18日野村紀子氏へのインタビューを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年、本プロジェクトに協力いただく形で、資料室に以下の新たな資料類が寄贈された。野村紀子氏所蔵資料(2014.8.1、2014.8.4、2014.8.7、2014.8.18、2014.12.17、2014.12.18)、吉田栄子氏所蔵資料(2014.2.25)。これら段ボールにして11箱分の新たな資料の追加によって、当初半年で資料全体のブリーフ・リスト化を目論んでいたがこれらの作業が継続されることとなった。《アントニー・ガウディ》《豪姫》2作品の関連資料以外はブリーフ・リストを作成済。また、大半の勅使河原宏映画作品でスクリプターを担当していた吉田栄子氏のインタビューが、同氏の体調不良により延期された(現在、2015年6月に予定)。作品のロケ地へ調査・撮影に行く予定であったが、吉田氏への詳細な場所確認等を経てから行う予定だったため、2015, 2016年度に行うことにした。草月会資料室の資料群のアーカイヴ化を進めることによって次のようなことが明らかになりつつある。一つは映画はとりもなおさず複数の人間の並行的な作業によって織りなされる一つの出来事であるということ。例えば同じ台本だったとしても所有者(例:監督とスクリプター)によって書き込みの差異が著しく現れる。監督は構想を書き込み、別のフォーメーションを模索し続けているが、スクリプターは撮影現場で起こっている出来事を詳細に記録し続けている。もう一つは、別の作品とでも呼ぶことがてきるような台本にのみ書き込まれている実現されなかった構想群および採用されなかったカットの束の存在である。実現されていく各プロセスにおいて見られていた潜在的な映画群は資料からのみ照らし出される別の映画であるだろう。また、これらとは別に実現されることのなかった未制作の作品群の存在も明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
● 資料群の分類・リスト化の継続:今年度に引き続き、ブリーフ・リストの作成を早期に完成させることを目指す。また各資料の単位の細分化を行う(例:同じ台本4冊で1件とした分類を各台本ごとに詳細化する)。さらにより詳細なデータ採取を行う。(例:台本の表紙の書込みのみのデータ採取だったが、表紙以外のデータも対象とする。)● 資料群のデジタル化:引き続き台本類を中心にデジタル化を行う。● アーカイヴ化のプロセスの撮影:資料体が編成されるプロセスの撮影を行う。● WEBサイトデータベースの設計・構築:モンタージュし続けることが可能なインターフェースの設計・構築を目指す。● ロケ地の調査・撮影:資料の充実している《砂の女》をまずモデルに調査・撮影を開始する。● 勅使河原宏映画作品関連資料群のさらなる調査:資料室以外の機関および個人が保有する関連資料群の調査を行う。
|
Causes of Carryover |
予定していた「作品のロケ地へ調査・撮影」を行わなかったため旅費と人件費・謝金を使用しなかった。 勅使河原宏作品にてスクリプターを担当していた吉田栄子氏へインタビューを行い詳細な場所確認等を経てから、「作品のロケ地へ調査・撮影」に行く予定であったが、同氏の体調不良によりインタビューを延期したため、2015, 2016年度に行うことにした。(現在、2015年6月にインタビューを予定。)
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は「作品のロケ地へ調査・撮影」に行くため、その旅費および協力者への謝金に充てる。
|
Remarks |
(1)邦楽器が受け継ぐ 技・形・音 こめられた丹精」 展では調査・企画・制作を分担し、カタログおよびWEBページ制作を行った。(2)「アジアの楽器図鑑」では主にインドネシア・沖縄等の調査・撮影・WEBページ制作を行った。
|
Research Products
(3 results)