2015 Fiscal Year Research-status Report
ホームムービーを活用した新しい芸術表現に関する研究
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26580030
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
三好 大輔 東京藝術大学, 美術学部, 非常勤講師 (70648443)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 8㍉フィルム / 回想法 / 映画 / 地域活性化 / 民俗学 |
Outline of Annual Research Achievements |
8㍉フィルムなど昭和30年代から50年代にかけて市井の人々が撮影されたホームムービーは、時代を経たことにより新たな価値が生まれている。ホームムービーは地域の映像資産として教育的価値や民俗史料としての価値があるだけでなく、回想法の現場に活用すれば医療福祉の分野での活用も見込まれることが解ってきた。本年度、長野県安曇野市で行った「あづみのフィルムアーカイブ」プロジェクトでは、芸術的アプローチにより市民参加型の映画づくりを行い、世代を超えた協働プロジェクトが「地域活性化」や世代間の交流にも有効であることが証明された。小中学生などが童謡唱歌を歌い、それをBGMとした作品を制作。若年層にとって、8㍉フィルムは縁のないメディアではありますが、自分の父母、祖父母が暮らした時代の風景をリアリティをもって受け取ることが出来るメディアであるというのが8㍉フィルムの魅力でもあります。小中学生が合唱を通して作品作りに参加することで、過去に記録された映像に興味を持ち、世代を超えた交流を生み出すことは、今、最も求められている関係性だと考えます。世代間の相互理解が映画づくりによってなされたことは、結果として町づくりの根幹を形成するものであり、自身が暮らす郷土への愛着へも繋がっていきます。収集されたフィルムは270本を越え、現在、約半数のフィルムのデジタル化が完了。今後残ったフィルムのデジタル化を進めると共に、フィルムの分類、高齢者施設での上映方法の検討などを進め、フィルムのより有用な形を模索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市民参加によるホームムービーの仕組みづくりは、新たな芸術表現としてより多くの市民へ発信するための大きな力となり得ることがこれまでの研究、実践でわかってきた。芸術が芸術家のためにあるのではなく、市民一人ひとりにあるという考えに至ったことで、多くの市民参加が可能となった。映像を提供する高齢者が主役になりながらも、合唱など音楽(BGM)制作では小中学生から市民合唱団などが参加することにより、世代間の交流が生まれた。ホームムービーを通してこうした交流や相互理解が生まれたことは、ホームムービーに新たな価値を生み出した結果である。また、忘れ去られてしまうであろう市民の目線で切り取られた風景、情景は、市民の心を捉えることができる地域の貴重な映像史料でもあることがアンケートの集計などから証明出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
安曇野市で行っているプロジェクトをモデルケースに、ホームムービーを活用した映画の上映会を繰り返し行う。市民からアンケート調査を行い、内容を分析・調査する。市民の声を作品作りに反映させることで、より有効な活用を模索する。また、デジタル化された素材を「年代」「内容」「フィルムの状態」等、詳細に調査し分類。「教育」「民俗史料」「回想法」「地域活性化」など、活用分野ごとのアウトプット方法を検討。より広く生きた素材として利活用されるための方法論を探る。研究と実践を繰り返し、より深く市民の心へ届くための仕組みづくりを検討、全国へ展開するモデルケースの構築に向けた研究を進める。本研究が全国の地域映像アーカイブを牽引していくひとつの礎になることを目標とし、実践を踏まえた方法論を検討していく。
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Causes of Carryover |
購入物品の価格に変動があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度物品費として使用する。
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