2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26580044
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
橋本 裕之 追手門学院大学, 地域創造学部, 教授 (70208461)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 真 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (40135637)
井出 明 追手門学院大学, 経営学部, 准教授 (80341585)
見市 建 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (10457749)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 芸能復興 / 被災地ツーリズム / 地域社会 / 民俗芸能 / コミュニティ再興 / 鵜鳥神楽 / 宿 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、壊滅的な打撃を受けた地域社会の復興や再生に際して、民俗芸能のもつ特筆すべき力や役割をフィールドワークによって実証した上で、その効果を持続させる仕組みとしての被災地ツーリズム導入の方法を検討することにある。平成26年度は具体的な事例として、岩手県の普代村を拠点とする鵜鳥神楽をとりあげた。東日本大震災以後の神楽衆の苦闘は、陸中沿岸各地の芸能団体に共通するものであるが、とりわけ広域の信仰に支えられた鵜鳥神楽の動向は社会的なインパクトが大きく、その動きは注視に値するため、今後も鵜鳥神楽を中心にとりあげることになる。実際は東日本大震災以後の巡行記録に関して、情報集約とデータ分析を行っている段階である。また、東日本大震災以後のコミュニティ再興に関する民俗芸能の全般的な役割をとりあげた記録・資料等を集約する作業にも従事した。 研究計画についていえば、本研究は橋本、中川、見市が2011年度から実施してきた「宿」上演の支援・調査を継承した。実際は8月末に岩手県の大槌町赤浜において鵜鳥神楽の「宿」上演を実施するための予備的な現地調査を行った。これはツーリズムと連動させた神楽上演を試行的に実施して、来年度以降の本格的なツーリズム・パフォーマンスに発展させるための予備的研究として位置づけられる。また、平成26年度は普代中学校の神楽同好会が伝承している中野流鵜鳥七頭舞のアメリカ公演が開催されたため、参与観察的な現地調査を行った。中野流鵜鳥七頭舞は鵜鳥神楽における舞込みの部分が発展したスピンオフ的なパフォーマンスであるが、東日本大震災以後、普代村における復興のシンボルとして位置づけられており、ツーリズムと連動させた上演の可能性を確認することができた。なお、メンバーによる研究会を6月に大阪で実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は予備的調査の段階であり、8月末に岩手県の大槌町赤浜において鵜鳥神楽の「宿」上演を実施するための予備的な現地調査を行った結果として、ツーリズムと連動させた神楽上演を試行的に実施する手がかりを得ることができた。また、鵜鳥神楽のスピンオフともいえる中野流鵜鳥七頭舞がアメリカ公演を実施して大きな反響があったことは、ツーリズムと連動させた神楽上演の可能性を確信させるものであった。実際、中野流鵜鳥七頭舞についていえば、帰国後にこうした気運が高まっている。また、鵜鳥神楽をとりあげた被災地ツーリズムは、平成26年度にも岩手県の普代村黒崎、岩泉町安家、野田村下安家などにおいて試行的に実施されており、来年度に向けた「宿」上演の支援・調査に関する環境が整ってきている。また、東日本大震災以後のコミュニティ再興に関する民俗芸能の全般的な役割をとりあげた記録・資料等は、現時点でほぼ集約することができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実績を踏まえて、鵜鳥神楽の「宿」上演の支援・調査を実施するのみならず、インパクト評価などをも実施することによって、その効果を実証的に明らかにする。そして、コミュニティ再興の一助としての被災地芸能のツーリズムの可能性を実践的に検討して、その方法論を提示する。「宿」復活に焦点をあてた芸能の役割を実証する作業を経て、今後のステップとして、コミュニティへの経済的効用を軸とした再生支援について明示的で実効性の高い計画を提示して、その試行的実施と評価というPDCAサイクルのなかで、ツーリズムとの連携を確立させる。経済至上主義的なツーリズムに陥って文化に深刻な変容を与えることには十分な注意をはらいつつ、経済なしには復興できない現地の喫緊の要請に応える方策を検討する。また、東日本大震災以後のコミュニティ再興に関する民俗芸能の全般的な役割をとりあげた記録・資料等を集約する作業は今後も継続していきたい。
|
Causes of Carryover |
平成26年度は鵜鳥神楽が北廻りの巡行を実施する年に当たり、「宿」上演に関する機会が比較的少なかったため、現地調査を行う機会も限られていた。したがって、メンバーが鵜鳥神楽の「宿」上演について現地調査を行うスケジュールをうまく調整できなかった。一方、平成26年度は普代中学校の神楽同好会が伝承しており鵜鳥神楽のスピンオフともいえる中野流鵜鳥七頭舞がアメリカ合衆国のサンディエゴを訪問して、数か所で公演を実施した。研究代表者はその旅程に帯同して現地調査を行う必要が生じたため、当初計画していた現地調査の内訳を変更することになった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は鵜鳥神楽が南回りの巡行を実施する年に当たり、東日本大震災以後に一定の時間が経過していることもあって、「宿」上演の機会が数多く予定されているため、当初計画していたスケジュールに沿って、できるだけ多くの機会に現地調査を実施する。そして、ツーリズムと連動させた神楽上演を数か所において試行的に実施するのみならず、その記録化・分析に重点を置く。また、東日本大震災以後のコミュニティ再興に関する民俗芸能の全般的な役割をとりあげた記録・資料等は今後も公表される可能性が高いので、引き続き集約する作業を実施したい。なお、メンバーによる研究会を6か月に1回、開催する(大阪1回、盛岡1回)。
|
Research Products
(16 results)