2014 Fiscal Year Research-status Report
欧米並びにアジアとの比較を介した日本近代文学及び映画における死の表象の再構築
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26580047
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Research Institution | Otsuma Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
城殿 智行 大妻女子大学短期大学部, 国文科, 教授 (00341925)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 死生学 / 映画 / 日本近代文学 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に基づき、死生学に関連する表象理論の構築に努めるとともに、日本および各国における映像および言語資料の収集と分析を行った。また、両者を結びつける形で、関連する内容の一部分を、「見えない傍観者 ―溝口健二と「あまりに人間的な」映画」と題して公表した。日本近代における表象システムの1つの転換期と見なしうる、1930年代の代表的な映画作品『残菊物語』および『元禄忠臣蔵』を主要な対象として、欧米における溝口健二論の定型を形づくっていた、「黙説法」の評価を中心とする解釈に根本的な批判を加えることで、認知理論にもとづく映像分析方法に異議を唱え、また一方では従来の精神分析的な映像解釈を読みかえた。たとえばD・ボードウェルやD・デイヴィスは、溝口が1930年代に作り上げたスタイルを、きわめて「日本的」な表象様式であると高く評価しているが、被写体の直視を映像表象の規範として前提する彼らの解釈は、典型的なエクゾティスムであると指摘されるべきであり、そもそも映像とは、表象されえない要素との関連においてのみ、実定的な意味をになうのではないかという発想を、根本的に欠落させている。そのような認識上の欠落こそが、むしろ決して直視しえないもの、つまりは死そのものから視線を逸らして、それを代替する散漫なイメージのみを量産する(ハリウッド)映画製作を可能にしているのではないかとも敷衍しうる。したがって、溝口健二監督作品を本研究課題の事例として取り上げ、また殊に1930年代作品に焦点を当てた本年度の研究実績は、今後の研究全体の推進にとって、核となる意義があったと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
後述の通り、為替相場の大幅な変動を鑑みて、当初予定していた欧州への資料調査時期を翌年以降に変更したため、研究実施計画との異同が生じた。しかし研究全般の遂行に支障はないと判断するため、当初の計画に照らして、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、前年度に生じた研究調査時期の変更を入れて、研究計画に若干の調整を加えつつ、それ以外は当初予定した研究実施計画に沿って、研究を推進する。
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Causes of Carryover |
急激な為替相場の変動に鑑み、配分された直接経費の合理的かつ効率的な執行の観点から、当初予定していた欧州への資料調査を1年見合わせた(3年間の研究期間内に調査が可能であれば、調査期間を変更しても、研究全体の遂行に問題がないと判断した)ために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のごとく、当初予定していた欧州への資料調査を行う。
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Research Products
(2 results)