2014 Fiscal Year Research-status Report
日本近代文学における活字文化と美術との共鳴に関する研究
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26580048
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Research Institution | Tokuyama College of Technology |
Principal Investigator |
一色 誠子 徳山工業高等専門学校, 一般科目, 教授 (80259936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 装幀 / 造本 / 日本近代文学 / 室生犀星 / 恩地孝四郎 / 岸田劉生 / 武者小路実篤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、読者と著者を結び、作家と装幀家あるいは芸術家を結ぶ役割を果たしている装幀に注目している。装幀をめぐっては、自身の作品に作家の作品を纏う作家の思惑と、作家の作品をキャンバスとして新たな作品世界を生み出す画家たちの思惑、作家が画家たちの作品を纏うことに宣伝効果を期待する出版社の思惑が交錯している。本研究では、三者の思惑を整理し、当時の文壇の動きや出版界の動きを対比しつつ、活字文化と美術が共鳴していく過程を明らかにしていくことを目的としている。 本年度は、装幀・造本に関する論の出始めた明治20年から大正15年までのものを「印刷雑誌」「図書月報」などを中心に文献調査を行った。この調査では、芸術家たちが積極的に装幀にかかわっていく一方、絵画と文学の融合についての意識は、作家側にも芸術家側も自覚的ではなかったことが資料から読み取れた。さらに、装幀家あるいは芸術家の主張を整理するために、「書物展望」(昭和6年第1巻刊行)の文献調査も実施した。また、「白樺」を接点とした、室生犀星、恩地孝四郎、岸田劉生とのつながりを調べる契機として、「大調和」「不同調」の文献調査を行った。この文献調査では作家が主催する雑誌の中で、作家と装幀家あるいは芸術家が協働する様を確認することができた。活字文化と美術の共鳴については、出版社(編集者)が加わることでどのように変化をしていくのかを、「書物展望」のほか「中央美術」「書窓」などを中心に調査していく目処を立てた。日本近代文学館(東京都)で、2回に分け調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「活字文化と美術とが共鳴していく過程を明らかにしていく」という目的達成のために本年度計画していた文献調査はほぼ終えたため、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、「印刷雑誌」「大調和」「書物展望」などの雑誌についての文献調査が主であったため、成果を研究会で経過報告をするのにとどまった。次年度は、調査研究の成果を積極的に公表したい。また、装幀・造本に関する文献のうち昭和2年から20年のものについて、「中央美術」のほか「書物展望」の再調査も行う。
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Research Products
(1 results)