2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Public Sphere and Women's Economic Ideas: Constructing a Model of Sociological Research in Women's Literature of Modern Britain
Project/Area Number |
26580050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大石 和欣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50348380)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 女性 / 19世紀 / 財産 / 慈善 / 経済 / イギリス / 文学 / 家政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1780~1830年代における社会活動をテーマにした女性文学作品のなかで、女性と公共圏をつなぐ連結点として財産がどのようにとらえられ、機能しているかを捕捉し、女性の問題として社会史的な観点から検証する。この時代の女性作家たちの作品には消費や社交、社会活動に絡んで財産の問題が浮びあがっている。女性たちにとって、資産は生活・消費のための財源であるが、同時に社交や慈善など社会的責務を営むために必要であり、それらを通して自らの社会的アイデンティティを構築するために不可欠な基盤でもあった。しかし、1870年および1882年の既婚女性財産法の成立まで私有財産を認められなかった女性たちにとって、経済的独立は不可能に近く、法的には夫や男性親族の管理下でしか消費活動、社交、社会活動のいずれも認められていないために不満とジレンマを生むことになった。 最終年度は1820年代から活躍するハリエット・マーティノーにおける経済観を調査した。ユニタリアンであり、マルサスの経済論・人口論にも傾倒した彼女は、女性にとっての家政の重要性を説いた。家庭という枠組みを強調しながらも、一方で国家経済を論じることで両者の関係性を間接的に示唆している。奴隷貿易廃止運動にも積極的に関わることで、家政の延長線上にあるべき慈善が消費や国家経済とも結びついていることを認知し、また浸透させた点で経済を媒介にした女性と公共圏の位相を例示する存在である。教育や地域における慈善活動を通して、曖昧な親密圏と公共圏の枠組みのなかで家政や経済が女性によって捕捉するのを助長した。マーティノーの言説には財産についても言及も多く、世紀後半の既婚女性の財産を認める法改正につながる萌芽も観察できる。 功利主義との関係から世紀末のロンドンと戦間期のカントリー・ハウスの経済について講演を行い、現在マーティノーについて論文執筆中である。
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