2015 Fiscal Year Research-status Report
ロマン主義と啓蒙思想―ウィリアム・ハズリットの共感論に関する思想史的研究
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26580051
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
松家 理恵 神戸大学, その他の研究科, 教授 (90212224)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウィリアム・ハズリット / 無私的想像力 / 自己 / イギリス・ロマン主義 / イギリス啓蒙思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
・人間精神の本性的無私性を説くハズリットの『人間の行為の原理についての試論』を分析し、スコットランド啓蒙(特にハチスン)の影響を確認した上で、ハズリットの議論の独創性を明らかにした。その独自な点とは、人間の意志的行為はもっぱら未来にのみ関わるが、現実に存在しない未来の自己への関心は、想像力が生み出す自己についての観念に基づいており、その点で他者に対する関心と変わらないという主張にある。言い換えればハズリットは、自我の観念(あるいは自己同一性の観念)と結びついた人間の本性的利己性の主張に対する反論として、時間のパースペクティヴを持ち込み、未来を非‐実在として現在・過去の自己から切り離すことによって、「未来の自己」と「他者」が想像力の対象としては本質的に同一であること、したがって人間精神は本質的に自他の区別のない公平無私なものであることを指摘した点である。 この分析結果を、論文「ハズリットの『試論』における未来の自己の他者性と無私的想像力」(『国際文化学研究』第45号)として公表した。
・上記のハズリットの議論では、想像力の働きとその無私性が重要な基盤となっているが、このようなハズリットの想像力(特にその共感能力)に関する思想がかれの文学批評にどのように適用されたのかを、ハズリットのイギリス文学に関する講義やエッセイをもとに検討した。そしてその中で、かれが同時代詩人の中で特に評価しているワーズワスについて、その作品に現れた強い自我意識に対して辛辣な批判を行っている点に注目した。この一見矛盾するワーズワスに対する態度の分析を、次年度の研究課題の一つとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人間精神の無私性を説くハズリットの思想の分析を行い、論文としてまとめることができた。 シャフツベリーハチスンの道徳哲学の系譜との関連性と相違について、一定の見解を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で解明したハズリットの思想がロマン主義文学にどのように適用され、また影響を与えたかを、以下の2面から研究する。 ・ハズリットの無私的想像力論とワーズワスに関する彼の批評(賛辞と批判)との関係の分析 ・ハズリットの『試論』で展開された想像力観また自我論の、キーツへの影響の再検討
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Causes of Carryover |
ロマン主義関係の図書資料収集に際して、大学の法人カードを使用しているが、今年度の使用可能期間が予想外に短かった(1月まで)ため、入荷予定が不明確な図書の購入を次年度に延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
収集が遅れているロマン主義文学関係の図書資料の購入を速やかに行う。
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Research Products
(1 results)