2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバル社会における女性のキャリア形成とネットワーク構築―文学研究の視座から
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26580054
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
志渡岡 理恵 実践女子大学, 文学部, 准教授 (80597526)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 少女文化 / 女子教育 / ジェンダー / クエーカー / 学校小説 / 流刑 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、女子の中等・高等教育が始まり、女性にも多様なキャリア形成が可能になった19世紀後半以降のイギリスにおいて、女性がどのような意識をもってどのようなキャリアを形成していったのかを、学校教育がおこなわれる以前の女性の場合と比較しながら、ライフ・ライティングや学校小説を中心とする文学作品の分析によって明らかにすることを目指している。女子教育と女性のキャリア選択に関する歴史学および社会学の分野における研究成果を参照しながら、統計からはなかなか見えてこない女性の意識の部分を文学研究の視座から解析することにより、女性のキャリア形成に関する問題のより精緻な分節化と体系化に新たな知見を提供することが本研究の目的である。 今年度は、まず、女子の学校教育が始まる前のイギリスの女性のキャリア形成について、クエーカーのネットワークを利用して慈善活動をグローバルに展開したエリザベス・フライの日記、手紙、著作や、彼女の活動に関する資料を収集・分析した。その結果、彼女の活動の基盤となった思想、活動を成功させるためにとった戦略を明らかにすることができた。 次に女子の中等・高等教育が始まった19世紀後半以降の女学校小説および女子大生小説を収集し、学校教育を受けた10代(および20代前半)の少女たちが自らのキャリアについてどのような意識を持つようになったのか考察した。その結果、学校小説では、家庭を出て、寄宿学校において同世代の学友や教師とさまざまなかたちで関わるなかで、少女たちが自らを見つめ直し、相対的に評価することを学びながら、社会における自分の役割について考え始める姿が描かれていることが分かり、学校がどのような場として機能するのか、そのメカニズムを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、①エリザベス・フライの活動②女学校小説と女子大生小説③マーガレット・パウエルのキャリア形成の3つの分析を軸に進めていくが、今年度中に①と②に関する資料の収集と分析をほぼ予定通りに行うことができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の研究計画に従い、 まず、Working Class Girl in Nineteenth-Century England: Life, Work and Schooling (1997)や、Life Below Stairs in the Twentieth Century (2010)などの研究書や、Toilers in London; or Inquiries Concerning Female Labour in the Metropolis (1889)、Women’s Work and Wages: A Phase of life in an Industrial City (1907)のような当時の資料を用いて、19世紀後半から20世紀の労働者階級の女性の生活史と、成人教育をはじめとする支援制度・組織について調べ、そのうえで、マーガレット・パウエルの自伝、チャーチルの秘書だった女性の手紙、店員と法律時事務所の秘書の日記と手紙などのライフ・ライティングや、The Type-Writer Girl (1897) といったキャリア・ガールをとりあげた小説を収集し、分析する予定である。 ただし、2015年4月から2016年3月まで在外研究でイギリスに滞在するため、物品を購入した際の検品の作業が行えないので、この間は予算の執行をせず、予算の執行の1年延期を願い出る予定である。
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