2016 Fiscal Year Annual Research Report
The literary study on women's career development and building of network in global society
Project/Area Number |
26580054
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
志渡岡 理恵 実践女子大学, 文学部, 准教授 (80597526)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 女子教育 / キャリア形成 / グローバリゼーション / 成人教育 / ライフ・ライティング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、女子の中等・高等教育が始まり、女性にも多様なキャリア形成が可能になった19世紀後半以降のイギリスにおいて、女性がどのような意識をもってどのようなキャリアを形成していったのかを、学校教育がおこなわれる以前の女性の場合と比較しながら、ライフ・ライティングや学校小説を中心とする文学作品の分析によって明らかにしていくことを目指したものである。最終年度に当たる平成28年度は、20世紀にようやく教育の機会が広がった労働者階級の女性が、どのような制度やネットワークを利用してキャリアアップを成し遂げていったのかを、マーガレット・パウエルの事例を中心に調べた。そして、これまでの研究結果と照らし合わせて、19世紀~20世紀イギリスにおける女性のキャリア形成について総合的に考察を行った。 パウエルは、キッチン・メイドという階級社会では最下層に近い立場から料理人にまで登りつめ、成人教育を受けてベストセラー作家となった。彼女の自伝は、労働者階級の女性が自らのキャリア形成を自らの声で語った初期の例であり、大変貴重な資料である。その分析により、これまで単純化される傾向にあった労働者階級の女性の豊かで複雑な意識のありよう、自己実現への渇望、社会に対する問題意識などが明らかとなった。この研究成果は、当時の労働者階級の女性の生活史に関する研究において、データからはこぼれ落ちがちな部分を補足するのに役立つという意義を持ちうる。 また、女子教育改革前後の女性のキャリア形成の実態と意識のありようを比較することにより、学校とそれ以外の教育組織・ネットワークが果たしうる役割を多角的に検討するための視点を開拓できたと考える。
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