2017 Fiscal Year Research-status Report
中国古典小説とは何か―「作者」・「語り手」・「主人公」をキーワードに
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26580064
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
上原 徳子 宮崎大学, 語学教育センター, 准教授 (50452917)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国古典小説 / 翻案 / 古典小説の英語訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、10月の日本中国学会第69回大会(山形大学)において、「近代知識人の古典小説観について―林語堂をてがかりに」と題し、口頭発表を行うことが出来た。本研究は、中国古典小説研究を行う上で常に抱えるジレンマである、「小説」とは何を指すのかという問題意識と、古典小説の定義づけを行うことを目的の一つとしていたが、古典小説が登場したばかりの頃に中国近代知識人自らが中国古典小説を英語版に翻案した事例を分析することで、直接その問題にアプローチすることができた。特に、翻案作品執筆時に利用した資料の中身を精査することから、当時やっと姿を現したところの近代的価値観に基づいた「小説」という概念が、当時どのように知識人に共有され、どのように敷衍していったのかについて多くの示唆を得ることができた。一方、日本で新発見された白話小説(「三言」)の情報が知識人の間でどの程度共有されていたのかや、海外在住の華人達が自分たちの文化として古典小説をどのようにとらえていたのかなど多くの未解決の点があり、発表会場では多くの指摘を受けた。そのため、それらの指摘を踏まえた論文作成の必要性がでてきた。年度中この問題に関連した論文「林語堂による英訳『鶯鶯傳』について」を執筆し、翻案作品の内容を分析してその改編について考察した。これは研究計画にもあった、「伝」という形式の文章の翻案であり、小説という概念について考えるよい題材といえる。しかしこの論文については、本の刊行が30年度にずれこんだ(5月刊行済)ため、詳しくは次年度の実績の概要に記述することとする。さらに、別内容の中国語論文も執筆提出済みだがそちらの公刊も年度末に間に合わなかったため次年度の報告内容に盛り込むこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の過程でその方向に変更があったこと、また家庭の事情により、追加の資料収集が必要だったがその時間が十分にとれず、論文化をうまく進展できなかった。しかしながら、発展の可能性を見いだしており、その点では挑戦的萌芽研究として順調に推移していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在得られている知見を論文にまとめて発表する行程が残っている。したがって、残りの期間は、本研究の総括を行うことにする。
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Causes of Carryover |
本来なら本研究の成果を論文にまとめなくてはならない年度であったが、幼児を抱えての研究であり、論文執筆や資料収集の作業がたびたび子の発熱等で中断された。そのため、さらに資料を集めて論文を完成させるところまで研究を進めることができなかった。次年度に残った金額は、論文作成のためさらに資料を収集するために使用するものである。
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