2016 Fiscal Year Annual Research Report
Nature's Agency in Literature: Ecocritical Experiments
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26580067
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Research Institution | Josai International University |
Principal Investigator |
芳賀 浩一 城西国際大学, 国際人文学部, 准教授 (70647635)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポスト3.11 / エコクリティシズム / 環境批評 / 小説 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は東日本大震災後の文学作品をエコクリティシズムの理論で読み込む作業を進め、「ポスト3.11小説論」としてまとめる準備に入った。ここではポスト3.11小説の全体像を描くと同時に、10程度の作品を採りあげて震災との関係について詳細に論じている。 また、アメリカの出版社から英語で出版するアンソロジー「Ecocriticism in Japan」(仮題)の1章分の執筆も手掛け、平成29年度秋には出版される予定である。この論文では大江健三郎の作品『晩年様式集』(2013年)を地震・環境の視点から論じている。また、この年の10月には日本近代文学会の秋季大会(於福岡大学)において奥泉光の震災後の小説とエコクリティシズムに関する発表を行った。 本研究は東日本大震災を経た日本の文学表現を環境中心的視点から分析し、環境批評の世界において自然災害文学の意義を問うと同時に、日本現代文学がこの分野において持つ価値の大きさを示すことにある。この目的にとっては、アメリカでの英語による出版のための論文執筆が今年度に行った最も重要な活動といえるだろう。それと同時に、エコクリティシズムの理論を整理し、ポスト3.11文学の分析に有効なアプローチとして提示するための作業も進めている。この内容の一部は日本近代文学会における発表において説明し、それに対して発表後に質問の形でフィードバックを受けることができた。 震災後の小説の分析と理論のまとめを同時並行して行うことで次年度におけるさらなる出版に向けて重要な蓄積を得ることができた。
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