2015 Fiscal Year Research-status Report
複合語の実時間的構造処理:語彙処理研究と統語処理研究の協働をとおして
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26580071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 たかね 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (10168354)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 友紀 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (50322095)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 複合語処理 / 眼球運動計測 / 事象関連電位 / 複合語アクセント規則 / Tone Sandhi |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複合語処理における演算的側面に焦点をあて、複合語内部の構造的処理が行われる実時間的側面を重視した、複合語処理への新たなアプローチを展開することを目的として実施された。具体的には、日本語の複合名詞における複合語アクセント規則(CAR)および中国語の複合名詞における声調変化(Tone Sandhi)を取り上げ、プロソディックな手がかりが、後続要素の予測にどのように寄与しているかを、眼球運動計測および事象関連電位計測を用いた実験によって明らかにした。 日本語については、今年度は頭高型の語(例:みかん)を、(1)単独語として正しいアクセント(HLL)、(2)異なるアクセント型ともCARを誤って適用したとも解釈できる場合(LHH)、(3)異なるアクセント型になっていると解釈される場合(LHL)、(4)東京方言としてあり得ない型(LLH)の4条件で事象関連電位の比較を行った。(1)と比較して、3タイプの型が異なるERP成分を惹起したことから、(2)は語彙的に異なるアクセントとしてではなく、CARを誤って適用したものと聞き手が判断しているとの結論を得た。但し、口頭発表において結果解析の問題点が指摘されたため、再検討を行っている。 中国語については、眼球運動計測実験を実施し、声調変化が、後続要素が存在することを予測する鍵となっていること、しかしながら後続要素の声調タイプまでは予測できていない可能性があることを示唆する実験結果を得た。また、事象関連電位計測実験も実施すべく、実験計画を策定中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語および中国語についての実験を実施し、その結果を複数の場で口頭発表し、研究は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、これまでに得られた結果の意味づけを理論的に検討した上で、国際学術誌に投稿すべく論文執筆を進めると同時に、新たな実験案を策定し、実施して行く。 日本語の複合名詞については、H.26年度に公表した実験が、CAR違反ではなくCAR不適用の例となっていたため、新たにCAR違反の反応を計測する実験を実施し、その結果を解析する。 中国語については、眼球運動計測実験の結果を踏まえてERP計測実験案を策定し、実施する。
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Causes of Carryover |
すでに実施済み実験の成果発表を予定していた海外での国際学会の日程が入試業務と重なり、成果発表を翌年度に行うこととした。さらに、視線計測実験および脳波実験で、これまでのデータの解釈の妥当性を高めるための追実験が必要と判断された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、2016年9月および2017年3月に行われる予定の国際学会での成果発表に向けて準備をすすめている。
また、追実験は現在刺激修正作業を進めており、今年度の早い時期に実施予定である。
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Research Products
(6 results)