2014 Fiscal Year Research-status Report
最適性理論の方法論を応用した発話の非流暢性の分析とその統計的検証
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26580073
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Research Institution | Niigata University of Rehabilitation |
Principal Investigator |
氏平 明 新潟リハビリテーション大学, 医療学部, 客員教授 (10334012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発話の非流暢性 / 非流暢性の引き金 / 引き金の序列 / 非流暢性の形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
発話の非流暢性の発生メカニズムはどうなっているのか。それを考えるのに、言語制約の序列下で、複数の出力候補中、その有力な制約に違反しないものが選ばれるという最適性理論からヒントを得た。その普遍的な言語制約を、統計的な蓋然性に基づく発話の非流暢性の複数の引き金に置き換えた。その引き金の序列により非流暢性の形が決定される。最適性理論は強い制約違反を避けて出力する消極的な出力だが、発話の非流暢性は強力な引き金に、あるいは複数の引き金にかかって積極的に出力する。非流暢性の引き金は、1.語句頭、2.音声の移行A(共鳴音から共鳴音へ)3.音声の移行B(共鳴音から阻害音へ)4.音声の移行C(阻害音から共鳴音へ)5.リズムに関わる音韻単位(日本語:モーラ、英語:頭子音と脚韻、中国語:音節)があげられる。これらの序列の相違から、日本語話者、英語話者、中国語話者とそれらの非吃音者と吃音者の相違が、発話の非流暢性の形態に、明示的に浮かび上がる。例えば、日本語の非吃音者と吃音者では、前者の引き金の序列は、音声の移行A>>リズム>>語句頭>>音声の移行Bとなる。後者は音声の移行Aと音声の移行Bが非吃音者の場合と入れ替わる。英語の非吃音者は音声の移行A>>リズム・語句頭>>音声の移行Bだが、英語吃音者は、音声の移行B>>音声の移行C>>リズム・語句頭>>音声の移行Aとなる。中国語非吃音者はリズム・音声の移行A>>語句頭>>音声の移行B・音声の移行A、中国語吃音者は音声の移行B・音声の移行C>>語句頭>>リズム・音声移行Aとなる。これで微妙な非流暢性の繰り返しの単位の各話者の違いが説明可能である。その成果を第40回コミュニケーション障害学会学術講演会で「非流暢性の引き金の序列について:日英語対照」として口頭発表した。また生活書院『生存学』8号に「吃音の 言語学的・音声学的特質」と題して投稿し、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに基礎的な研究は終了して、国内での学会発表と言語学系ではないが社会学の一般雑誌に投稿し掲載されている。あとは統計の情報工学的手法からの検証と論文の英語訳とその推敲、そして海外での発表ならびに海外の非流暢性研究関係の有力誌に投稿することが課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者で情報工学者の太田貴久氏と発話の非流暢性の言語データをコーパス化して、統計的検証を裏付ける情報工学的側面から非流暢性の資料における、複数の引き金の分布とその機能を、日本語、英語、中国語とその非吃音者と吃音者について行う。 論文を英語に直す。これまでに発表した内容の下訳は完成しているので、それを非流暢性研究の専門家である、実験心理学・言語学のロンドン大学のピーターハウエル教授、言語病理学のイリノイ大名誉教授のエフド・ヤイリ博士に、英語だけでなく内容もチェックしていただく。そしてその修正を終えて、有力な専門誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
消耗品の端数が出た。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品に組み入れて消化する。
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Research Products
(3 results)