2015 Fiscal Year Research-status Report
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26580074
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
片桐 恭弘 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (60374097)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 語用論 |
Outline of Annual Research Achievements |
日常言語の使用は高度に文脈依存的である.文脈依存性は,主体としての話者の発話生成・解釈を規定する時空間,認知的,言語的要因のみに限定されず,言語使用者の所属集団に固有の社会規範・文化・価値が言語行動を規定するという側面も存在する.本研究は,生物・物理科学分野で局所的構造・現象と大域的構造・現象との相互作用を記述するために提案された「場」概念を出発点として,言語使用を規定する社会的・情報的制約を「場」ととらえる新しい言語理論を開発することを目的とする. 平成27年度は,昨年度の研究会合における「場」概念に関する討論を土台として,言語学における「場」概念の具体化を目指して,言語人類学,社会言語学,情報科学,脳科学,コーパス言語学など多様な専門分野の研究者を集めた国際的研究集会を二回開催した.研究集会における研究発表・研究討論を通じて,「場」概念の理論化にあたっては,(1) 原初的な場,会話活動生起の場,理論的分析対象の場の三種類を区別することが重要であること,(2) 会話生起の場においては,「図」となる発話内容を支える「地」の役割を果たす文脈には,自己と他者が未分離の原初的な場の捉え方が基礎に存在すると捉えられること,(3) 場は日本語の表現使用や日本文化に典型的に現れるが,場的な現象は日本あるいは東洋に限定されるわけではなく,世界的に広く存在する可能性が高いこと,などが共通了解として浮かび上がってきた.今後は,研究集会での議論を踏まえた論文を集めた書籍出版を目指すこととした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では研究会合での研究討論を通じた研究進展を主眼とする.本年度は国際研究集会を開催して実質的な議論を行うことができた.その研究討論を通じて「場」概念の明確化を一歩進めるとともに,国際的な語用論研究の中での「場」概念位置づけの方向性の見通しも得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では研究会合での研究討論を通じて研究進展を図ることを主眼とする方針であり,来年度も引き続き国際的研究会合を開催して,言語学における「場」概念の核と広がりの双方の洗い出しを企画する.また研究進展段階でのまとめを図るために論文集として書籍出版を目指す.
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Causes of Carryover |
本研究課題では研究集会での研究討論を通じた研究進展を重視する方針である.本年度の国際研究集会開催にあたっては他の研究資金からもサポートを得ることができたため,本研究課題使用額の一部を来年度の国際研究集会開催のために当てることとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「場」の言語学国際研究集会開催のための費用,特に講演者旅費・謝金に使用する予定である.
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