2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26580079
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
首藤 佐智子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90409574)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 司法コンテクスト / 法と言語 / 語用論 / 取調過程 / 司法通訳 / 前提 / 誤訳 / 推意 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の主な研究活動は、研究代表者が分担者として参加している科研費基盤Bプロジェクト「取調過程の言語使用の実証的・学際的分析により言語研究の社会的寄与を目指す研究」と共同で行なった研究と、独自に行った「司法通訳」に関する研究とに大別される。取調過程に関する研究では、高野山事件と呼ばれるケースにおける取調調書とその録音データを語用論的観点から分析した。録音データには表れていない表現が調書で使用されているため、調書を読む際には前提や推意が喚起されることを明らかにした。この研究成果は、2015年10月24日に獨協大学で開催された法と心理学会第16回大会におけるワークショップ「取調べ過程をめぐる心理と言語」において、「取り調べ過程における会話情報と供述調書の言語学的比較分析 ー語用論的観点から留意事項を考える―」と題する報告として発表した。「司法通訳」に関する研究としては、研究代表者が2010年に言語鑑定を行なったガルスパハ事件における司法通訳を題材に扱った。この研究成果は2015年12月13日に早稲田大学で開催された電子情報通信学会 思考と言語研究会において、「前提を伴う表現の司法コンテクストにおける取り扱い -ガルスパハ事件における誤訳問題-」と題した招待講演をする機会があり、その場で発表した。また、2015年12月に甲南大学で開催された法と言語学会の研究大会に参加し、他の研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の主な研究活動は、前述の科研費基盤Bプロジェクト「取調過程の言語使用の実証的・学際的分析により言語研究の社会的寄与を目指す研究」と共同で行なった研究では大きな成果をあげることができた。これは、基盤Bプロジェクトに参画することにより、司法分野における共同研究者から貴重なデータの提供が得られたためである。具体的には、高野山事件における取調調書とその録音データを分析できたことは想定外の収穫であった。録音データには表れていない表現が調書で使用されているため、調書を読む際には前提や推意が喚起されることを明らかにし、2015年10月の法と心理学会第16回大会で発表し、他の研究者と貴重な意見交換を行った。「司法通訳」に関する研究としては、研究代表者が2010年に言語鑑定を行なった「ガルスパハ事件」を題材に扱った。この研究成果は2015年12月に電子情報通信学会 思考と言語研究会において発表し、ここでも、参加者と意見交換を行い、貴重な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、これまでに収集したデータの分析を深め、研究発表を行うことを中心に活動する。高野山事件における取調調書とその録音データの語用論的分析を継続し、録音データと調書との相違をさらに明らかにすることを目指す。「司法通訳」に関する研究に関しても、ガルスパハ事件における誤訳問題の分析をさらに深める予定である。現在英語で執筆中の論文は、国際ジャーナルに要旨を提出し、査読の結果を待っている状態である。
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Causes of Carryover |
研究発表の場がどちらも東京であり、旅費がかからなかったことが理由である。研究自体は順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は海外における研究成果の公表を目指す。
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