2014 Fiscal Year Research-status Report
連濁を用いた言語発達研究の試み-文字言語の影響を探る
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26580080
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
杉本 貴代 常葉大学, 健康プロデュース学部, 准教授 (70267863)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レキシコン / 連濁処理方略 / 幼児期 / 学齢期 / 文字知識 / 語種 / ピッチアクセント / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本語に固有の連濁の処理方略の質的変化を検討し、幼児期から学齢期に見られるレキシコン(心的辞書)の発達的(不)連続性および個人差をもたらす要因を探ることである。 本年度の成果として、幼児から成人を対象とする言語産出実験を実施した結果、文字習得の有無、習得した文字種(かな文字か点字か等)により、子どもの連濁処理方略とその発達的変化の方向性が異なることを示唆する知見を得た。 定型発達児においては、かな文字既習の幼児を対象に文字刺激を呈示した連濁産出実験を行った。呈示した文字種により連濁生起傾向に特徴が見られ、文字無し条件、ひらがな条件では刺激語のピッチアクセントに基づいた連濁傾向を示していたのに対し、カタカナ条件では連濁傾向が抑制される結果となった。今後は言語発達データも収集しつつ、連濁処理方略に関する縦断研究に発展させていく。 全盲の幼児を対象に連濁の獲得に関する縦断研究を開始した。点字習得前の盲児(preliterate blind children)は、(晴眼の)定型発達児と同様にピッチ・アクセントを手がかりとした連濁方略を用いる段階がある。点字習得後の幼児と先天盲の成人では、どちらも連濁方略が質的に変化していることを示唆する知見が得られている。 今後も調査を継続しつつ、研究対象児を増やし、連濁以外の言語発達的側面との連動(相互影響)も検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼児期から児童期の定型発達児および視覚障害児を対象とした縦断研究を開始し、データを収集した。視覚障害児においては、児童福祉施設、幼稚園での統合保育の様子を丁寧に観察・聞き取りしたことにより、実験の開始時期が予定より遅れたが、幼児から成人までの視覚障害者に適した実験刺激を作成し、調査を円滑に進めることができた。現在、学齢期の発達障害児と、日本に来て間もない継続バイリンガル幼児のそれぞれに適した実験装置を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
障害の有無にかかわらず、実験が子どもにとって心理的負荷が大きくならぬよう、研究協力児の特性に応じた実施時期と研究体制を整えて進めていく。 定型発達児に比して視覚障害児は少数であり、同じ地域からの研究協力者を確保することが困難であるため、少数の事例を縦断研究とするとともに、本年度以降は、全国的規模で協力を要請していく。また、発達障害児についても、学校や医療機関等の協力を得て、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
初年度に開始した縦断研究の続行のための諸経費と、研究対象児を全国から広く募るためための出張旅費、学会発表に係る諸経費が見込まれている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究発表のための学会出張費、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、他での調査にかかる旅費、協力者への謝礼、研究補助者へのアルバイト料等。データ分析のためのパソコンソフト購入費。データ保存用のパソコン記録媒体の購入費等。
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