2015 Fiscal Year Research-status Report
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26580085
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Research Institution | Sanyo Gakuen University |
Principal Investigator |
山根 智恵 山陽学園大学, 総合人間学部, 教授 (60269983)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語接触 / 岡山方言 / 方言受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)昨年度に引き続き、言語接触という観点から、長島愛生園を訪れた人々について園誌『愛生』[1949(昭和24)年8月号~1966(昭和41)年3月号:1949(昭和24)年3月訪問者分~1965(昭和40)年12月訪問者分]、『愛生年報』『隔絶の里程ー長島愛生園入園者50年史』[1945(昭和20)年~1949(昭和24)年3月訪問者分]、『国立療養所長島愛生園 創立80周年記念誌第二部 振り返れば80年』(『愛生』に記されていない訪問者分)を参考に分析した。 その結果と傾向は次の5点にまとめられる(『山陽論叢』第22巻拙稿参照)。①岡山県からの訪問者が全体の3割強(34.9%)を占め、次に近畿地方16.3%、以下海外6.6%、中国地方(岡山県を除く)6.0%、関東地方6.0%と続いた。②訪問者の所属機関については、宗教関係者が28.3%と最も多く、次に官公庁からの訪問者20.1%、学校関係者11.5%と続いた。③戦前と比較し、訪問者数の合計が1.63倍に増加した。④訪問者数の面からは、遠方の九州・沖縄、東北からは減少した。⑤文化活動や技術講習会の講師の訪問が目立つようになった。ここから、特効薬の出現で、訪問者との交流が進み、言語接触の頻度も高まったことが推察される。 (2)長島愛生園入所者18名、邑久光明園入所者18名への出身県の方言調査および岡山県の方言調査、また岡山県在住者29名、研究代表者の在籍大学学生15名(日本人学生6名、留学生9名)への岡山方言調査を行った。結果、①園の成り立ちから、関西出身者が多い邑久光明園のほうが岡山方言の認知度が低いこと、②岡山県在住者と比較し、認知はしているものの岡山方言使用度が両園共に低いこと、③個人差はあるものの、両園共に岡山県に近い地方の出身者の岡山方言認知度が高いこと、④「おえん(だめだ)」「きょーてー(恐ろしい)」のような否定的意味を持つ語彙の認知度が両園共に高いこと、の4点が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は邑久光明園でも入所者の方に調査することができ、また岡山在住者の方々への方言調査も行うことができた。特に方言調査に関しては、各園で18名の調査協力者を得るられたので、その結果をまとめ、学会で発表することが可能となった[2016(平成28)年5月]。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)入所者の方々の談話をある程度収集できたので、本研究の第1の目的である談話分析を進め、それを方言受容に関する聞き取り調査の結果と併せて総合的に分析・考察する。そしてその結果を学会で発表する。 (2)ハンセン病療養所内で使用されていた特別な語彙があることがわかったので、その語彙の収集および使用度について調査する。 (3)1年目より行っている文献調査を引き続き行い、1966(昭和41)年以降に長島愛生園を訪れた人たちと入所者の方々の接触状況について分析・考察する。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査のテープ起こしをまだ業者に発注していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
(1)インタビューデータがほぼ収集できたので、そのテープ起こしを業者に依頼する。今年度予算の多くを、このテープ起こし代に使用する予定である。 (2)学会発表が可能となったので、その交通費、宿泊代に充てる。 (3)長島愛生園、邑久光明園への交通費(タクシー代、バス代、JR代)、ハンセン病療養所関係者へのインタビュー調査に出向く際の交通費(タクシー代、バス代、JR代)に使用する。
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