2014 Fiscal Year Research-status Report
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26580086
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊島 孝之 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (40311857)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語学 / 生成文法 / 極小主義 / 統語構造 / 多重支配 / 右枝節点上昇 / 併合 / 線状化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である平成 26 年度は、多重支配構造が示唆される言語現象の経験的検証と、そこで生じる理論的問題の精査を行った。多重支配構造が示唆される最も有力な言語現象として、右枝節点繰上構文が挙げられるが、先行研究から削除による分析が適した構文と、多重支配構造による分析が妥当な構文に分類する必要があることが判明した。 削除分析のみでは、全ての右枝節点繰上が分析不可能であることより、多重支配構造には蓋然性があり、理論的には De Vries (2009) が指摘するように、最新の極小主義プログラムで認知されている併合操作の外的再適用により派生可能である。 しかしながら、De Vries (2009) が外的再併合の一例として挙げる主要部移動における循環性問題の解決は、線状化において元位置での音形化を予測し、全ての主要部移動が音形的に顕在化しないため、特殊な形態論的構造操作を規定せざるを得ない。 併合操作として先行研究において様々な亜種が明示的にも暗黙裡にも提案され仮定されてきたが、それらを理論的に精査すると、併合される二項の内、a) 一方は根範疇であること、b) もう一方は最大投射範疇もしくは最小投射範疇であること、c) 併合操作適用の出力は根範疇であることが最低必要条件であり、対併合 (Pair-Merge)、及びそれが含意する範疇切片は、理論的また経験的にも廃棄すべきであるとの結論を得た。 この成果については、研究発表の[図書]の項に記載した論文にて公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成 26 年度は、多重支配構造が示唆される言語現象のうち、最も多重支配構造の蓋然性が高いと考えられる右枝節点繰上構文について経験的検証を行ったが、そこで分析的、理論的問題にぶつかり、先に大前提となる統語構造構築にかかわる併合操作の理論的考察を行う事となり、当初計画していた他の言語現象について十分には検討できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 27 年度は、平成 26 年度に当初計画していたが十分に進まなかった、右枝節点繰上構文以外の多重支配構造が示唆される言語現象にかんする経験的検証を行い、多重支配構造での意味解釈について、モデル形式意味論での理論的問題をフレーゲ流構成性原理の観点から精査し、その解決法について理論的研究を行う方策である。
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Causes of Carryover |
11.の「現在までの達成度」でも記したが、平成 26 年度に計画していた経験的検証の過程で、先行して理論的考察が必要となり、当初計画していた研究相談や研究動向調査の喫緊性が減少したため、旅費として確保していた額が未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成 27 年度は、昨年度に当初計画通りには十分に進まなかった経験的検証を行うため、未使用額は昨年度に予定通りに実施できなかった研究相談や研究動向調査の旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)