2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26580086
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊島 孝之 九州工業大学, 大学院 情報工学研究院, 教授 (40311857)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 言語学 / 生成文法 / 多重支配構造 / 等位接続 / 意味論 / 選言 / 存在量化 / 疑問 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、多重支配構造が示唆される言語現象を分類する上で重要な、等位接続と従属接続の違いを精査し、特に日本語において等位接続の意味を持つ選択並立接続助詞「か」についての意味論研究を行った。 多重支配構造が示唆される言語現象を分類する上で等位接続と従属接続の構造上の違いが重要である。国語文法において、接続詞という品詞区分が認められているが、単項として時制節しか取らず、統語的には接続副詞として機能しており、他言語における等位接続と同等の機能を果たしているのは、付属語として分類される接続助詞であり、生成文法理論においても等位接続の意味に解される接続助詞は、一般に等位接続詞と見做されてきた。 しかし、英語の ‘and’ に対応する日本語接続助詞「と」は、‘and’ とは異なり、名詞類同士しか接続できず、また日本語は主要部末尾型であるにもかかわらず、主要部先頭型である英語と同様、音形的には接続される二項の間に表出する。 同様に、日本語選択並立接続助詞「か」も音形的に接続される二項の間に表出するが、英語の ‘or’ 同様、名詞類以外の範疇を項として接続可能であり、論理的選言の意味を表す。また、不定称指示名詞類に後続される不確定副助詞「か」は、論理的存在量化子として機能するが、選言と存在量化の近似性は論理学でも近世から知られていた。また、文末終助詞の「か」は疑問を表すが、疑問文の意味論的研究では、一般に疑問文の外延は答えとなる命題の選言的集合と捉えられており、最近では論理的選言も通範疇的な選択肢の集合と捉える提案がなされている。 これらより、日本語には統語的等位接続は存在せず、選択並立接続助詞「か」は分割化された集合を導入する演算子とすることで、通範疇的選択、存在量化、疑問を統合して分析すべきであるとの結論を得た。この成果については、研究発表の[学会発表]の項に記載した通り公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成 27 年度は、多重支配構造が示唆される言語現象を分類する上で等位接続と従属接続の構造上の違いを精査し、そこで問題となる統語構造と論理的意味との不整合に着目し、新たな意味解釈方式を提案したため、多重支配構造で問題となる「共有」構成素の意味解釈についての考察は、十分には行えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 28 年度は、平成 27 年度に十分に進まなかった、多重支配構造での「共有」構成素の意味解釈について、提案した選択肢集合に基づくモデル形式意味論での理論的問題をフレーゲ流構成性原理の観点から精査し、その解決法について理論的研究を行う方策である。 昨年度に会計処理上未使用となった繰越し額は、今年度に研究相談や研究動向調査を増やして使用する計画である。
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Causes of Carryover |
平成 26 年度に計画していた経験的検証の過程で、先行して理論的考察が必要となり、当初計画していた研究相談や研究動向調査の喫緊性が減少したため、旅費として確保していた額が未使用となり、平成 27 年度にその分の研究相談や研究動向調査のため出張旅行を行ったが、相手方の都合等により年度を跨ぐ日程が生じ、会計処理上、繰越額がほぼそのまま未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度に会計処理上未使用となった繰越し額は、今年度に研究相談や研究動向調査を増やして使用する計画である。
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Research Products
(1 results)