2016 Fiscal Year Research-status Report
アジア諸国との関係において日本語が抱えるソフトパワーとしての言語政策的役割研究
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26580090
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐藤 和之 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (40133912)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソフトパワー / 日本語教育 / 孔子学院 / マンガ / アニメ / クールジャパン / テレビゲーム / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボーダレス化した国際社会にあって、日本の主張や思想、文化を他国に正しく伝える術としての日本語は、日本と他国を繋ぎ、自国を詳しく説明できる術として重要である。強力な英語化が進行する国際社会と中国に追い越された日本は、日本人の思想や文化を他国や他国民、そして日本に居住する日本人や外国籍住民に日本語で伝える重要性をどう説明し、尊重させようとしているのか。国際社会における日本語の言語力を各国での言語意識調査によって位置づける研究を実施した。 3年目になる2016年度は、①日本の国内外における日本語(=中国語、韓国語)の学習者数の長期推移と孔子学院(=中国語学習者数)および米国国家安全言語保障イニシアティブ以降の日本語や韓国語、中国語学習者数の変化について、および②韓国での日本の伝統文化やポップカルチャーの受け容れに際しての日本語状況をマンガやアニメ、テレビゲームを通して調査した。研究協力者として、占領米軍の立場から戦後処理を研究してきたV.L.Carpenterとカリフォルニアで日本文学の研究をしているL.K.Miyake、韓国で社会言語学の研究をしているY. Minghoとの協働によってロサンゼルス、ソウル、弘前で上記課題についての研究と発表会を持った。 具体的な話題として、日本の伝統文化およびポップカルチャー受け容れに際しての、北米や韓国での日本語教育の展開とマンガやアニメ、テレビゲーム等での日本語の需要状況との相関を数値として示すこと。また日本語学習者の増減については、孔子学院の北米や韓国での展開および米国国家安全言語保障イニシアティブ以降の中国語学習者数の推移との関係についても具体的な数値として示せるよう考慮することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度の会議結果を2016年度も継続課題とし、ソフトパワー政策について共同研究する日本人研究者、日系米人研究者、米国人研究者、韓国人研究者のチームで調査を続けている。その結果、日本政府が進めるクールジャパン政策は以下の点で、中・韓のソフトパワー政策と一線を画すことを確認した。 中国でのミリタリーパワーやエコノミックパワー(AII銀行)、さらにそれらへ教育的に匹敵する孔子学院を前面に出したソフトパワー政策は、北米や韓国に強く影響していた。中国の孔子学院や米国の国家安全言語保障イニシアティブでの政策展開と絡めながら数量化して示す必要のあることを確認した。 一方で日本国内外での日本語学習者は中国語学習者数と比較すると衰退はしていないまでも横ばい状態であった。孔子学院政策や国家安全言語保障イニシアティブ政策を追い風とした中国語学習者の増加に比べ、アニメなどに頼る日本のクールジャパン政策についての比較対象報告書の刊行を日米韓の研究者それぞれの専門分野からすすめることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国と日本の関係が2016年度に悪化した。そこで2017年1月に韓国で、日米韓の4研究者(研究協力者)による対日本語への緊急調査と会議をソウルで実施した。 一方で2017年封切りの日本製アニメ映画は、韓国公開2週連続第1位278万人を動員していた。。音声は日本語のままで韓国語の字幕付きでの韓国上映の同アニメ映画は10代後半から20代の若者で上映館は満員となっていた。日本のアニメを通して、日本の風景や生活様式、日本人高校生の話し方などを韓国人若人は積極的に受け入れていた。ソフトパワーとして重要な役割を担っていることが確認できた。 アジアのソフトパワーを研究する私たちは、国家間の緊張に言語パワーが緩和する現状を継続して掌握できるよう、2017年前期から調査を立案し、報告書の刊行に向けて論文にしていく作業を進める予定。
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Causes of Carryover |
研究最終年度間際になり、研究対象国の韓国と日本の関係が悪化した。国家間の緊張に日本のソフトパワーはどのような役割を果たしているのかを継続調査するために次年度すぐに調査できる予算を計上した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度当初からの調査をすべく、調査費用と共同研究者の打ち合わせ旅費に使用予定。
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Research Products
(10 results)