2015 Fiscal Year Research-status Report
中国人看護・介護従事者の研修から就労現場で必要となる日本語と異文化対応能力の分析
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26580100
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
大場 美和子 昭和女子大学, 人間文化学部, 准教授 (50454872)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / 日本語教育 / 介護 / 介護福祉士国家試験 / 異文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国人看護・介護従事者を対象に、来日後の専門学校での研修から国家試験合格後の就労までの業務のやりとりを収録し、当該業務で必要とされる日本語能力、および、当該業務中に発生しうる異文化の問題を、会話データから具体的に明らかにすることである。 平成27年度は、まず、平成26年度の予備調査をふまえて本調査を行った。具体的には、中国人介護従事者が介護施設でアルバイトを行う場面の音声データの収録を行った。また、可能な範囲で、日本語や異文化の問題、アルバイトや介護の専門学校での勉強の様子などについて、インタビューによる聞きとり調査を行った。さらに、介護施設の日本人スタッフや専門学校で指導にあたっている教員にもインタビューを行った。以上のデータを対象に、介護施設のアルバイト場面で使用される日本語の特徴の分析を行っている。 次に、本調査に加えて、介護福祉士国家試験の筆記試験で使用される日本語の文法・語彙項目の分析を行った。具体的には、6年分の筆記試験を対象に、形態素解析を行い、どのような文法・語彙項目が使用されているのかを抽出し、さらに日本語能力試験の観点からレベル判定を行った。この結果、文法項目は、1級レベルは殆ど出現せず、2級レベルも限られた項目の使用であることがわかった。一方、語彙項目は、級外レベルとなる介護の専門語彙が多数使用されていることが明らかとなった。つまり、日本語能力試験のあるレベルを基準にした日本語教育ではなく、文法項目と語彙項目のそれぞれの実態に合わせた日本語教育を検討する必要があることが明らかとなった。 今後は、筆記試験で使用される日本語と介護の現場で使用される日本語の比較を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、介護福祉士国家試験の筆記試験の形態素解析による日本語の特徴の分析を加えたため、本調査で収集したデータの分析に遅れが出た。しかし、現在、外国人介護従事者が有資格者として就労の機会を得るには、日本の介護福祉士国家試験の結果が関わる。就労現場の日本語とともに、国家試験の日本語の特徴も合わせて分析することが必要であると考えられたため、新たな分析を加えた。 また、本調査の音声データの文字化を外部業者を利用して行ったが、会話データ分析用の文字化を行える人が限られており、納品までに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
介護福祉士国家試験の筆記試験の形態素解析による分析は既に終了している。また、本調査で収集した音声データの文字化には、外部業者を利用するなどして効率化をはかって終了している。よって、今後は音声データの分析を集中して行う予定である。これにより、筆記試験とアルバイト場面で使用される日本語の違いをデータから明らかにしたいと考える。
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Causes of Carryover |
・文字化を外部委託で行う際、録音状態があまりよくないために追加料金の可能性を考慮し、収録データの冒頭と終了部の不要部分を省略して依頼したところ、追加料金も発生せずに作業成果が納品された。 ・平成26年度の予備調査での調査協力者が諸条件により調査対象外となり、本調査では2名に絞って調査を行うこととなった。このため、調査協力者への謝金ならびにデータの文字化の謝金が低く抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本調査の分析は進めているので、これまでの分析と合わせ、平成28年度は積極的に研究成果を発表し、また、学会・研究会に参加して分析結果に対する意見を多角的に求めたいと考えている。このための旅費に支出したいと考える。 分析において新たなデータ処理の必要性が発生した場合、効率化のために研究協力者等に作業の依頼を行い、その謝金を支出したいと考える。
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