2015 Fiscal Year Research-status Report
大学英語教育における文学的教材の適格性に関する学際的研究
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26580108
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
平野 幸彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20275001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 仁一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20300080)
秋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60192895)
ハドリー 浩美 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (60534732)
市橋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70613397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 英語教育 / 大学教育 / 英語リーディング / 文学的リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、英語を第二言語とする日本人を対象とした大学学士課程レベルの英語リーディング指導の中で、文学作品を教材として用いる有効な方法を開発するために、オーセンティックな文学テクストと、そのリトールド版とを比較分析することにより、文学テクスト固有の特性を記述し、それを活かした教材制作の指針を具体的な形で提示することにある。なかでもとりわけ本研究に特徴的な点は、英米文学、英語学、第二言語習得研究という異なる学問分野を専門とする研究者たちがチームを組んで、これを行おうとすることにある。 3か年計画の中間に当たる今年度は、初年度に引き続き、研究代表者及び分担者が、それぞれの専門分野の観点から、本研究の遂行に必要な資料を収集し、その分析・考察に従事した。具体的には、英米文学研究者は主に文学テクスト固有の特質の解明や文体論的分析手法の開発の進展を目指し、第二言語習得研究者は読解メカニズムについて、さらに研鑽を深めた。一方、英語学研究者は、文頭・文末に現れ、主節部全体を意味上の主語とする英語述語表現について、その文体的特性を明らかにし、この表現の談話機能をもとにする構造分析(Nakajima(1982)、Reinhart(1976))を援用しながら、その存在を支える文法的メカニズムを明らかにした。 また、日本英文学会全国大会や全国語学教育学会国際大会で行われた、本研究に関わる発表に分担して出席することにより、関心を共有する他機関に所属する研究者の動向を調査したり、所属機関の他研究プロジェクトが企画した研究会の開催に関与したりすることにより、研究の蛸壺化を回避し、水準を向上させるよう努めた。 さらに年度後半には、英米文学研究者を中心に、翌年度に所属機関で複数実施する予定の試行授業のシラバス作成に着手し、最終年度に実施すべき研究活動の円滑な運営に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者及び分担者が所属する組織(国立大学法人)が申請した大学教育再生加速プログラム(AP)が採択されたため、平成29年度より学事歴にクォーター制が導入されることになり、そのための諸作業とりわけ全学英語教育カリキュラムの大規模な改定に追われることになった。また、関係者の大半が所属する文系学部の改組が第3期中期目標・中期計画の平成31年度の項目に盛り込まれた。これらは本研究課題申請時には全く予期していなかった事態であり、そのために関係者全員が所期のエフォートを本研究課題の遂行に投入することが極めて難しい状況になっている。このように、残された期間でどこまで遅れを取り戻せるか頗る不透明な状況であるが、改めて気持ちを引き締め、最善を尽くしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
第二言語習得研究によると、言語習得には「気づき」が必要とされている。文学作品を教材として使用することによって、学習者の注意が(文学特有の)言語形式に向かい、学習者中心の言語活動によって意味内容の理解が深まると同時に、言語形式をワーキングメモリへ取り入れることが可能であろうと考えられている。また、Widdowsonが主張しているように、「言語用法」と「言語使用」の観点からも、自然な発話を習得するには「文脈」を持つ文学作品の使用が英語教育にとっても有益であると考えられる。以上の仮説に対する我々のスタンスは依然として変わりはない。 平成27年度は文学作品のリトールド版(グレーディッド・リーダーズ(GR))とそのオリジナルを収集し、両者の分析に着手した。しかしながら【現在までの進捗状況】に記した事情のためシラバスの完成には至らず、翌年度の第1及び第2学期に3クラスで授業を進めながら同時進行的に作成することにした。具体的には、(1)GRで全篇を通読させた後オリジナルならではの描写や記述を含む箇所を部分読みさせる、(2)オリジナルだけを読ませる、(3)GRだけを読ませる、など複数のやり方を試みながら、内容理解・言語形式についてのディスカッションやペアワーク等のアクティビティーを行うことを考えている。 また、上述の活動が学習者の英語運用能力の向上に資するか否かを見極める目安として、客観的な外部テストを複数回受験させることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究代表者及び分担者各々に執行金額の管理を委ねたため、全体として僅かな残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
僅少な金額のため、翌年度分として請求した助成金と合算して使用する。
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