2016 Fiscal Year Research-status Report
大学英語教育における文学的教材の適格性に関する学際的研究
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26580108
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
平野 幸彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20275001)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 仁一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20300080)
秋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60192895)
ハドリー 浩美 新潟大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (60534732)
市橋 孝道 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70613397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 英語教育 / 大学教育 / 英語リーディング / 文学的リテラシー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、英語を外国語とする日本人を対象とした大学学士課程レベルの英語リーディング指導の中で、文学作品を教材として用いる有効な方法を開発するために、オーセンティックな文学テクストと、そのリトールド版とを比較分析することにより、文学テクスト固有の特性を記述し、それを活かした教材制作の指針を具体的な形で提示することにある。なかでもとりわけ本研究に特徴的な点は、英米文学、英語学、第二言語習得研究という異なる学問分野を専門とする研究者たちがチームを組んで、これを行おうとすることにある。 3か年計画の最終年度に当たる今年度は、英米文学研究者3名が所属機関でそれぞれ担当している演習科目を利用して、各々独自のやり方でオーセンティックな文学テクストと、そのリトールド版を活用した授業実践を行った。また、教育効果測定の一環として、外部機関の開発による英語運用能力測定テストを、第1学期の初めと第2学期の終わりに履修学生に受験させた。その一方で、英語学研究者は、文頭・文末に現れる英語述語表現が意味上の主語を選択する場合、二通りの選択方法があることを明らかにし、Williams(1974)などの先行研究に依拠し、その選択方法を支える文法的メカニズムの解明に取り組んだ。そして第二言語習得研究者は、所属機関の英語教育カリキュラムの成果検証を行い、改善すべき課題を抽出する一方、多読学習にコーパス支援型学習を取り入れることによって言語形式にも注意を向けさせる(フォーカス・オン・フォーム)授業を実施した結果、多読学習単独型の授業よりも高い教育効果が認められたため、さらなる改善を目指すべくレパートリー・グリッド法を用いて、英語学習に関する履修生(日本人学生・留学生)の個人的構成概念の特徴を明らかにするなど、前年度に引き続き英語読解メカニズムの解明に尽力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者及び分担者の所属組織(国立大学法人)が来年度から学事歴にクォーター制を導入することになり、また「経済社会を牽引するグローバル人材育成支援」事業(GGJ)が今年度をもって終了することを受けて、実践英語教育プログラムの新規開発を含めた全学英語カリキュラムの改定を余儀なくされた。この作業に本研究課題の関係者全員が関与しているため、所期のエフォートの投入が不可能になった。 そのため、今年度の上半期までに完了させるはずだった試行授業の試行授業の実施が今年度下半期にまでずれ込み、その結果、データ収集は完了したものの、十分な分析が未だなされていない状況である。 そこで日本学術振興会に補助事業期間の1年延長を申請したところ、幸い承認されたので、上述の遅れを取り戻すべく努力する所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
第二言語習得研究によると、言語習得には「気づき」が必要とされている。文学作品を教材として使用することによって、学習者の注意が(文学特有の)言語形式に向かい、学習者中心の言語活動によって意味内容の理解が深まると同時に、言語形式をワーキングメモリへ取り入れることが可能になると考えられている。また、Widdowsonが主張しているように、「言語用法」と「言語使用」の観点からも、自然な発話を習得するには「文脈」を持つ文学作品の使用が英語教育にとっても有益であると考えられる。以上の仮説に対する我々の肯定的スタンスに依然として変わりはない。 従って、全体の研究計画に大きな見直しは行わず、やり残している作業を今年度中に完了させることによって所期の成果を上げることを目指したい。
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Causes of Carryover |
研究代表者及び分担者各々に執行金額の管理を委ね、かつ年度途中からは翌年度の執行に備えたため、全体として僅かな残余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画になかった翌年度分として使用する。
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Research Products
(5 results)