2014 Fiscal Year Research-status Report
英語の初期学習者における内容重視活動ー小中を繋ぐCLIL活動
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26580112
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CLIL / 小学校英語 / 内容重視の英語の授業 / community活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学びを育てる英語教育プログラムとして「Content Language Integrated Learning (これ以降CLIL)」を公立小学校の児童を対象に開発し、その効果について量的、質的に研究することを目的としている。研究初年度にあたる2014年度では、下記の成果を挙げた。 ①CLILを支える理論について文献研究を行った。また夏に行われた世界応用言語学会( AILA World Congress 2014)に参加し知見を広めた。 ② 理論に基づき開発したCLIL活動を、実際に公立の小学校5年生を対象に、小学校教員とチーム・ティーチングを組み、実施した。予定より早い6月下旬より小学校で週1回行われる英語活動の時間を利用し実践した。 ③ 実施後、児童に対しCLILに関するアンケートを実施した。 ヨーロッパなどではCLILは大規模で、国からの支援などを受けて行われている場合が多く、またコンテント(内容)を中心に進められている。しかし、日本の英語の授業でこのようなスタイルのCLILを実施することはほぼ不可能である。特にまだ英語力がほとんど発達していない小学生の場合は、いわゆるHard CLILを実施することはできない。しかし、CLILは言語を「意味のある文脈」の中でもたらし、学習者に言語を使う本当の意味を与えることができる利点がある。池田(2011)のCLILタイプ分類を使用し、日本の公立小学校で実践できるCLILを、英語教育に焦点がおかれているという点からsoft CLIL、少ない時間であるが毎回行う(5~10分)のでHeavy CLIL、授業の1部で活動を展開するという意味においてpartial CLIL、また授業言語は英語で行うが、黒板に単語の意味を日本語で書くことからBilingual CLILと考え、カリキュラムおよび教材を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2014年度は研究初年度であり、まずはContent Language Integrated Learningについて理論的な理解を深めた。その結果、日本の公立小学校ではヨーロッパなどで行われているHard CLILの実施は不可能であることがわかり、CLILの要素を生かしたsoft CLILのカリキュラムを開発することに努めた。もともとは、内容に対する知識 (content)を高め、同時に言語能力(communication)を育て、学習者の思考能力(cognition)を深め、そして異文化理解力(community/culture)を高めることができるように考えられているが、これら4つのCに以下のように対処し、カリキュラムを作成した。①content: 学級担任に他の授業、特に社会科、理科などで学習した内容について質問を考えてもらい、それを研究者のほうで英語に訳し、回答する方式をとった。また、英語の力を伸ばすために使用しているストーリーの内容に関するテーマをコンテントとした。②communication:英語の力を育てるためにストーリー(昔話)を使用した。③cognition:児童は他教科で学習したことや、ストーリーに関連するテーマについて自分たちのworld knowledge,もしくはbackground knowledgeを使って考え、思考力を深めた。④community (culture):本研究ではクラスの仲間との相互理解、コミュニティー作りと解釈した。 作成したカリキュラムを小学5年生のクラスで10月から実践した。これは予定よりも4ヶ月早い導入であり、興味深いデータが収集できた。計画通りに実際に公立小学校で作成したカリキュラムを実践できたことに大変満足をしており、児童の反応を取り入れ、より効果的な教材を開発することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度予定していた計画以上に進めることができたので、その経験を生かし、今後も活動を拡張して進めていきたい。具体的には研究代表者が指導する児童は小学校6年に進級するが、基本的には2014年度に行った要領で小学校5年生と6年生を対象にCLIL授業を進めていく予定である。来年度(2015年度)、研究代表者は在外研究を取り、アメリカで研究生活を送るため、実際に授業をすることができない。その対処として、彼女が関わってきた公立小学校の英語の授業で行われる予定のCLIL活動を分析する予定にしている(担当者は彼女の院生である)。 昨年とは変わり、今年度は学習効果を測定、評価したいと考えている。CLILに対してどのように考えているのかを、アンケートを通して児童や学級担任に答えてもらう予定である。また、CLILで学んだコンテントに関する知識も測定する予定である。さらに、昨年度行ったCLIL授業を進める際に作成したワークシートを分析し、短い時間でのCLIL授業を効果的に進める方法を模索する。同時に撮影していた授業の映像を見て、改めて児童の反応を分析したいと考えている。 ヨーロッパとは異なるがコンテントを中心にした教授法(content-based approach)がどのようにアメリカのESL(English as a second language)クラスで行われるのかを見学する予定である。教材開発のために必要な書籍やイラストなどを購入し、データ収集および入力に対して謝金を支払う予定である。さらにアメリカにいる間に積極的にこちらの学会で発表できるように学会発表に応募するつもりである。研究費はその旅費などにも使用される予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は理論構築に時間をかけたため、書籍の購入以外はあまり費用がかからなかった。その購入には大学からの研究費を使用した。 学年度末にCLILが盛んに行われているヨーロッパの小学校(特にオーストリア)を見学する予定にしていたが、来年度(2015年度)に在外研究を取り、アメリカで1年間研究することになり、その準備に追われ、見学を断念せざるを得なかった。そこで予定していた旅費を使用することがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度(2015年度)はアメリカで在外研究を行う予定になっている。滞在先のアメリカではCLILという用語は使用せず、Content-based, partical immersion, Theme-Basedなどと呼んでいる。しかし、言語教育と教科教育を統合する形態、また意味のある言語活動を目指しているとこは同じであり、CLIL研究者の中にはこのようなほかのタイプの授業形態も含めてCLILと定義するものもいる。アメリカでの英語習得と日本での英語学習は言語習得環境が異なることも事実であるが、アメリカ国内で実践されている小学校にでかけ、授業を見学する予定である。 また、考案したCLIL授業を続けて日本で実践してもらう予定になっているが、そのデータ、また昨年収集したデータの分析を行う予定である(謝金使用)。さらにこれらの研究結果を積極的に学会で発表していきたいと考えている(旅費使用)。
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Research Products
(12 results)