2015 Fiscal Year Research-status Report
英語の初期学習者における内容重視活動ー小中を繋ぐCLIL活動
Project/Area Number |
26580112
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 小学校英語 / 内容重視の活動 / CLIL / CBI / アカデミック言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は学びを育てる英語教育プログラムとしてContent Language Integrated Learning (これ以降CLIL)を公立の小・中学校で実践する可能性を探る研究である。研究1年目ではプログラムを作成した後、小規模ではあるが実践し、その効果を質的・量的に検証した。それを中心に2015年度は下記のような研究を行った。 ① 改めてCLILの理解を深めるため、CLILと同様の外国語教授法とされるContent-Based Instructionについて文献研究を行い、この二つの教授法について考察し、論文にまとめた。 ② 1年目に行った公立小学校高学年での内容を重視した活動における児童の反応をアンケートや授業のビデオを通して検証した。 ③ 幼児・児童を対象とした内容を重視した活動を継続して開発し、それを普及させるためにマニュアルを作成した。 今年度1年間は所属機関から頂いた在外研究のためアメリカでの研究となった。そのため文献研究を中心に研究を継続した。その中で充実した内容重視の活動を行うためには学習者の「academic language(学習言語)」を伸ばすことが不可欠であることを認識した。英語教育が本格的に始まっていない公立小学校で英語のacademic languageを多く導入することは難しいが、小中連携においてはその育成が大きな観点になると考えられる。幸い客員研究員として在籍していたハーバード大学大学院教育学部言語専攻では、academic language の研究が進められていたため、授業を聴講し、実際にacademic languageを伸ばすために開発されたプログラムが実践されている小学校を見学した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は研究2年目に当たり、当初の計画では内容を重視した活動を開発し、公立小学校において実践する予定であった。しかし、今年度1年間は所属機関より在外研究の機会を与えられ、アメリカに在住したため研究者自身が授業を行い、データを収集することはできなかった。そのため若干研究方法を下記のように変更し、研究を継続した。その結果、当初計画していた研究実施計画を十分に遂行していると考えている。 ① 初年度、既に進めていた公立小学校での内容を重視した活動を児童や先生のアンケートおよび授業のビデオを見ることで検証した。また同地域では当該研究者が開発した英語プログラムが進行しており、それらの授業の中で展開されている内容を重視した活動に対する日本人の英語教員および担任からのフィードバックを得た。 ② 民間英語教育機関で使用する英語プログラムに、研究者が開発した内容重視の活動を導入し、それを充実させるための教材開発、また講師指導について研究した。さらに内容重視の活動の成果を検証するテストを開発し、その結果を検証した。 ③ 英語教育の中で内容重視した活動を効果的に行うために必要な言語習得について、小中連携を視野に入れ、academic language(学習言語)の観点から研究を始めた。 1年目の文献研究で更に研究が必要であると感じたCLIL(Content Language Integrated Learning)とCBI(Content-Based Instruction)について文献研究を更に深めた結果、日本の公立小学校で行われている内容重視の活動をCLILと呼ぶことに関しては無理があるのではないかと考え、小中連携を通して、小学校高学年生を対象とした内容重視の活動の導入とそれがもたらす効果について改めて研究を続けていくこととした。
|
Strategy for Future Research Activity |
2016年度は研究期間最後の年度となる。当初は研究2年目で研究者本人が実践した内容重視の活動に関するデータを収集し、分析する予定にしていた。しかし前述したように研究2年目(今年度)はアメリカに在住したため、自ら公立小学校で授業を展開することはできなかった。しかし、研究者が関わっている地域ではすでに23校が研究者の開発した英語プログラムを実施し、全ての学年でなんらかの形で内容重視の活動が展開されている。今年度はそれらの授業を見学し、さらに関わっている日本人英語教員および担任、そして児童を対象に活動についてアンケートを実施し、実態を調査する予定である。さらに研究者が関わっている民間の英語教室(幼稚園から小学校6年までおおよそ2千名のデータ)を対象に同様のアンケートを実施する予定である。 更にCLILで重要と考えられている知識(content)、言語能力(communication)、思考能力(cognition)に深く関わるacademic language(学習言語)についてアメリカでの研究で取得した知見をさらに深め、特に小学校高学年から中学生にかけての小中連携でどのような学習言語が必要なのかを研究したいと考えている。 また、この2年間で進めてきた研究の集大成として、今まで開発してきた内容を重視した活動を冊子にまとめ、公表したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
今年度はアメリカで在外研究を行い、多くの時間をCLIL指導に必要なacademic languageに関する文献の研究に費やし、その書籍などを購入した。論文などは全て在外研究先よりPDFで取得できるため費用はかからなかった。アメリカの幼稚園や小学校で行われていた内容重視の活動を見学したり、連邦の教育省にも出かけインタビューなども行ったりしたが、これらは全て個人の研究費でまかなった。次年度繰越しの多くは研究初年度からのものであり、これも当初計画していた視察を今年度の在外研究準備のために断念したことによりおこったものである。今年度の支出の多くは内容重視の活動を含めたプログラムを実施している公立小学校(23校)からのデータ入力にかかる謝礼金であった。同様に内容重視の活動を行っている民間の英語教育機関からのデータは全てその機関で入力されているものを使用したため、私の研究費を使用する必要がなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は継続して内容重視の活動を行っている公立小学校と民間の英語教室からのデータを分析していくが、謝金が必要なのは前者だけである。研究者が開発している内容重視の活動は「ストーリー」と深く関係しているので、今年度はアメリカからプロのstorytellerを招聘し、英語圏におけるstorytellingと内容重視の活動について研究者とともに講演をする予定である。また、在外研究のため実施できなかった視察を予定しており、アジアの小学校英語教育でどのように内容重視の活動が行われているか調査する予定にしている。 さらに、研究最終年度になるため、この2年間で進めてきた研究の集大成として、今まで開発してきた内容を重視した活動を冊子にまとめる計画なので、その印刷代として研究費を使用する予定である。
|
Research Products
(6 results)