2014 Fiscal Year Research-status Report
ニューファンドランドのカナダ編入と英米加――20世紀北大西洋世界像刷新の試み
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26580134
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
細川 道久 鹿児島大学, 法文学部, 教授 (20209240)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニューファンドランド / カナダ / イギリス帝国 / 関係史 / ドミニオン / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1949年にニューファンドランドがカナダに編入するまでの過程を英米加との関係に留意しつつ考察し、それによって、カナダ周縁部からみた「もう1つのカナダ史」を描くだけでなく、当該期の北大西洋世界の重層的構造や多重的な相互関係を明らかにすることを目的としている。 初年度にあたる平成26年度は、まずはニューファンドランドの通史を理解することに努めた。邦語文献が皆無であるため、英語文献を渉猟・読解し、大航海時代から今日までの大まかな歴史の流れを把握し、ニューファンドランドの歴史の特異性を抽出した。たとえば、北大西洋漁場として注目されつつも定住化が進まなかったため、カナダ本土側と比べて植民地統治制度の整備が遅れていたことや、ニューファンドランドがイギリス帝国の「ドミニオン」と形式的には位置づけられながらも、カナダ、オーストラリア、南アフリカなどのドミニオンとは対等ではなく、むしろドミニオンと植民地の中間的位置にあったことなどを理解することで、ニューファンドランドが従来のカナダ史・イギリス帝国史の記述が当てはまらない特異な歴史的展開をとげてきた点を明らかにした。 加えて、本研究課題に関する史資料調査のため、トロント大学、および、ニューファンドランドのメモリアル大学と州文書館を訪れた。メモリアル大学では図書館での調査だけでなく、歴史学部の教員とも面会し、カナダ編入過程をめぐる昨今の論争や、カナダ本土とニューファンドランドの戦争の記憶のあり方の相違など、本研究課題遂行にあたって多大な示唆を得ることできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の遂行にはニューファンドランドの通史の理解が大前提であったが、日本で入手できる英語文献が極めて少なかったため、カナダでの現地調査を待たねばならなかった。加えて、校務(教務委員長)の関係で、研究に費やせる時間が減ったり、長期間の現地調査の日程を組むことができなかったため、平成26年度当初の研究実施計画よりやや遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目にあたる平成27年度は、初年度に行なった通史理解をさらに深めて、ニューファンドランドがイギリス帝国のドミニオンとして特異な位置にあったことを具体的に把握すするとともに、カナダ編入に関する史資料調査を充実させたい。 史資料調査の結果如何にもよるが、上記の考察・調査を踏まえて、最終年度の平成28年度には、特異な位置ゆえに英米加の間で翻弄されたニューファンドランドが最終的にカナダへの編入を選択するまでのシナリオを具体的に描けるように努めたい。
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