2014 Fiscal Year Research-status Report
歴史GIS研究のためのトポロジカル空間解析手法に関する萌芽的研究
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26580141
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥貫 圭一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (90272369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,歴史学へのGISへの応用性を拡張することを基本的目的に置きつつ,空間解析の新たな手法を探ることを目指している。平成26年度は,手法の開発に先んじて,まず具体的な歴史GISデータの構築とそこでできる分析に着手した。研究代表者は,従来から,美濃尾張を対象とした近世GISデータの構築と分析に取り組んでいた実績を有しており,当面,そのデータから着手することととした。その成果は,地理情報システム学会にて「近世尾張の村ポリゴンデータ構築と田畑分布」として公表した(奥貫圭一ほか,2014)。その成果では,構築された歴史GISデータに,寛文村々覚書や尾張徇行記といった地誌書に記録されている近世各村の田畑面積比率を属性データとして付加した上で,空間解析手法を適用することで,近世濃尾平野における田畑分布の特徴を見出すことができた。とくに近世名古屋について,その西部で田が卓越していたものの,一定の畑が確保されていて,その傾向は海岸部近辺で強かったことがわかった。このことは,GISによる空間解析によって始めて発見できたことがらであり,GISと空間解析の歴史学への適用がいかに可能性を有しているかを示すものであろうと考えている。 平成26年度は,上記の他,長野県における明治期のGISデータ構築にも一定の成果を得た。その成果は,地理情報システム学会にて「明治初期の町村域GISデータ作成―長野県を事例として―」として公表した(服部ほか,2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では,研究対象である歴史GISデータを用意するにあたり,まず,旧版地図などの古地図・絵図の収集が必要となる。しかし,本研究課題を申請した当初予算案と比べて,内定後の配分金額が大幅に減ぜられていたため,初年度の平成26年度は,ひとまず,代表者が事前に有していたいた歴史GISデータをとりあげることで成果をあげることができた。また,歴史GIS研究分野で国際的にリードするハーバード大学の研究グループとも議論をする機会を設け,今後の方針に賛同してもらえた。そうした点でみれば,達成度はおおむね順調と言える。しかしながら,本来,古地図・絵図の収集が前提であったので,東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)の共同研究制度を利用して,国土地理院から旧版地図画像を提供していただくよう交渉を進めてきた。旧版地図は,謄本申請によって,事実上購入することができるが,ある地域について面的に用意しようとすると予算を圧迫する。謄本申請制度があるものの,旧版地図を自由に公表することには,おそらく差別にかかわる問題がある。そうした背景があるためか,国土地理院との交渉は,東大CSISを通してのものに制限され,残念ながら,国土地理院からの提供は平成26年度内に実現できなかった。この点で,達成度が「やや遅れている」と自己評価した次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の事情で,当初想定していた研究実現枠組みから規模を小さくする必要がある。具体的には,すでに一定の成果を得ている濃尾平野と長野県とに集中することを視野に入れつつ,余裕があれば,上記地域を中心として研究を拡張していければと考えている。
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Causes of Carryover |
評価の欄に記入したとおり,本研究課題では,研究対象である歴史GISデータを用意するにあたり,まず,旧版地図などの古地図・絵図の収集が必要となる。しかし,本研究課題を申請した当初予算案と比べて,内定後の配分金額が大幅に減ぜられていたため,初年度の平成26年度は,東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)の共同研究制度を利用して,国土地理院から旧版地図画像を提供していただくよう交渉を進めてきた。この交渉の結果次第で,予算執行の枠組みに大きな見直しを迫られるため,本年度は,予算執行を最小限のものに留めていた。交渉がうまくいくことを待っていたものの,この状況では,研究の進捗に大きな影響が出てしまうため,平成27年度以後は,地域を絞り込んで,本研究課題の予算内で古地図・絵図の準備・整理を行い,研究を進めていこうと考えている。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由で示したとおり,旧版地図などの古地図・絵図の購入と整理,さらには,そのデータ化を行いたい。その際,予算額に見合うように研究規模を見直し,地域をしぼりこんで進めていければと考えている。
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Research Products
(2 results)